村田諒太は強かった

国籍や民族に関係なく、強いものがヒーローになれるのがスポーツ、というのは現在の価値観ですが、それを作ったのはモハメド・アリだと私は思っています。
近年ではマニー・パッキャオが、”アジア人はボクシングで世界的スターになれない”という常識をひっくり返したのもまた大偉業といっていいでしょう。
そういう流れのなかで、我々が期待するのは、やはり”世界的日本人ボクサー”の誕生です。

しかし、世界で人気を博すためには、日本人が得意とする軽量級ではなかなか難しいものがあります。
”小さい”というだけで格闘技としての魅力が低いと考えるひとも多いですし(ボクシングだとKO率も低い)、軽量級はライト級以上に比べて競技人口が少なく、面白い対戦を組みにくいということもあるでしょう。
日本には軽量級の世界王者がたくさんいますけど、ボクシングの本場であるラスベガスから声がかかったという話はほとんど聞いたことがありません。
日本の王者だちはよりアグレッシブに勝ち続け、少しずつ評価を上げてゆくしかないわけです。

そんななか、日本人ボクサーで、マッチメイクの不利を感じさせない選手がひとりだけいます。
それはロンドン五輪のミドル級金メダリスト・村田諒太。
ミドル級はアメリカでも人気の階級ですし、”金メダリスト”の肩書ももちろん大きいものがあります。
そして、ロンドン五輪後にプロに転向した村田選手はアメリカを主戦場に一歩一歩キャリアを積み重ねると同時に、アマからプロのボクシングにも適応してゆく、ついに今日2017年5月20日、世界タイトルをかけた戦いに挑むこととなったのです。

場所は東京・有明コロシアム。
相手はWBAミドル級暫定王者で同級1位のアッサン・エンダム(フランス)377戦35勝(21KO)2敗というなかなかの古強者です。
気になる事前予想でいうと、ブックメーカーのオッズは村田1.45倍、エンダム2.70倍となっていて、スピードのエンダムをパワーの村田が制するという見方が多かったようです。
ただ、ここで気になるのは、村田はこれまでエンダムと同じくらいのレベルの選手と戦ったことがないということです。
村田本人はそれを不安要素に上げ、エンダムは自分の有利な点と語っていました。
ようするに”プロボクサー村田諒太”の実力はまだ未知数なんです。

ですから、私も期待と不安が入り混じった気持ちで試合を観ていたのですが、1Rはリングをぐるぐる回りながらジャブを放つエンダムに対し、村田はほとんど手を出さず、堅いガードで相手の攻撃を凌ぎつつ、相手の戦力分析。
ラウンドの終わり頃に挨拶代わりの右ストレートをエンダムのガードの上から叩き込んだときは迫力がありましたね。

2Rも村田はガードを堅めながら相手の圧力をかけ、隙あらば右を狙うという戦術。
エンダムは足を使ってのジャブ。手数は多いものの有効打はありません。
村田の一発を警戒してエンダムはなかなか踏み込めませんでしたね。
そして4R、村田が右スト―レトとボディへのフックでエンダムを弱らせると、カウンターの右でダウン!

弱ったエンダムを仕留めたい5Rですが、相手の手数は止まず、それを警戒した村田は無理攻めをせず、堅いガードと隙をついた右という戦術を変えません。
それでもいいパンチをいくつか当て、試合は明らかに村田のペース。
6Rも同じような流れから、いいアッパーが入るも、ダウンを奪うまでには至らず。

7R以降も、ガードを固めて圧力をかける村田に対し、エンダムはリングを回りながらのジャブ。
エンダムはときおりラッシュをかけてきますが、村田はそれをしっかり防ぎ、主導権を渡しません。
隙を見ての右やボディも終盤まで衰えず、村田のスタミナはさすがでした。
ただ、”絶対にKOする!”という激しい攻撃は見られず、勝利への道筋を一歩一歩固めてゆくようなボクシングはちょっと物足りないものがありましたかね。
まあ、五輪王者ですし、アマチュアボクシングの勝ち方が身についているのでしょう。

そして最終12Rでも村田は無理をせず、それまでのポイントをしっかり守るボクシング。
もちろん、セコンドからも「攻めろ!」という声は飛んできません。
会場にいた日本のファンも、テレビ視聴者も、村田の勝ちを確信していたはずです。
怖いのは一発をもらうことだけでしたけど、村田はきっちりと完封し、試合終了のゴング!
その表情には満足そうな笑みが浮かんでいました。

…ところが、判定のなった採点は、2-1でエンダムの勝利。
村田も呆然としていましたけど、テレビを観ていた私も頭が一瞬真っ白になりました。
なんじゃこりゃ!
私はもちろんボクシングは素人ですけど、世界戦の判定基準くらい知っています。
①有効打で相手にどれだけダメージを与えたか
②どちらがより攻撃的だったか
③ディフェンスで相手の攻撃を的確に防いだか
④どちらが主導権を握っていたか
この4つのうち、手数の多かったエンダムが②を評価されるのは適当かもしれませんが、他の3つは
らかに村田が上回っていたと私は思いますし、それが一般人の目ではないでしょうか。
そして、解説の山中慎介さん(WBCバンタム級12回防衛の現役王者)も不満を口にし、試合後に元王者たちがツイッターなどで疑義を呈しているのですから、”プロの目”で見てもおかしい判定なわけです。

試合後の村田さんは、ジャッジからのあまりの仕打ちに「気持ちの整理が必要です」と語り、今後については「考えられない」とのことでしたけど、ぜひリベンジをしてもらいたいものです。
プロ初の黒星がついたとはいえ、これまで未知数だった”強さ”は、十分証明したのですからね!
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