稲田大臣辞任のあとに残った恐ろしさ

今年(2017年)の春から疑惑が指摘されていた〈南スーダンPKO日報問題〉ですが、今日7月28日、特別防衛監察の結果が報告されました。
それによると、昨年7月と10月に情報開示請求があったものの、陸上自衛隊司令部はこれに応じなかったばかりか、陸上幕僚監部がその後日報を廃棄処分にしたのは、情報公開法と自衛隊法違反にあたるとのことです。
この結果、岡部俊哉陸上幕僚長ら幹部5人が停職や減給の懲戒処分、日報の非公表を決定した黒江哲郎事務次官も停職処分を受けることとなりました(岡部氏と黒江氏は処分決定の後退職)。
また、野党やマスコミから「非公表を了承していた!」という疑惑をかけられていた稲田朋美防衛大臣については、「(会議や面会のなかで)なんらかの発言があった可能性は否定できないものの、書面を用いた報告がなされた事実や非公表の了解を求める報告がなされた事実はなかった」との報告が出され、なんとも微妙ながら、稲田大臣には法令違反がなかったとの結論が下されました。

これを受け会見を開いた稲田大臣本人は、
「国民のみなさまに防衛省・自衛隊の情報公開に対する姿勢について疑念を抱かせ、内部からの情報流出を匂わせる報道が相次ぐことにより、防衛省・自衛隊のガバナンスについても信頼を損ないかねない印象を与え、結果として国内外のそれぞれの現場で日々任務にあたる隊員の士気を低下させかねないという点で、極めて重大かつ深刻なものであると考えております」
と述べ、1ヶ月分の給与を返納した上で防衛大臣の職を辞することを発表。
”ガバナンス=統治”を理由にしたところに稲田さんの無念と怒りが滲んでいますね。

そもそも”情報の隠蔽”といっても、防衛省ではこの日報を公文書として扱っておらず、あくまで日々の記録であり、毎日増え続けてゆくことから適宜処分する仕組みになっていたわけです。
保存のための文書は『教訓要報』があるのでそれでいいという判断だったのでしょう。
元空将の織田邦男氏によれば、この日報というのは、日々の天候や情勢、隊員の状況、任務実施内容、作戦の問題点などを上に報告するための文書だそうです。
防衛省が「行政文書の体を成していない」といっているように、これは外部に見られることを前提としたものではなく、あくまで現場から司令部への報告書であり、報告者の主観や意見なども書いてあるわけです。
そして司令部はそれを情報のひとつとして受け止め、諸々の観点から『教訓要報』にまとめ、それが公の記録になるのだと思います。

こういうプロセスというのはおそらく民間企業でも同じことではないでしょうか。
下からの報告書や企画書の原案などというのは”生々しいもの”であり、顧客や株主には見せられないはずです。
しかし、生々しいだけにそこにひとつの真実があり、それを組織として共有することが大切なのはいうまでもありません。
ですから、仮に上が「公表しても大丈夫な報告書や企画書を書け!」と指示するようになれば、下からの生の声は上がってこなくなりますし、それは組織を息苦しくし、停滞させるに違いありません。
上の仕事というのは、その生々しものを綺麗に整え、下を働きやすくさせてやることなのかもしれませんね。

そういうプロセスのなかで問題が起こるのは、”組織のため”を理由に”生々しい報告”を上が見ようとしなかったときです。
途中で握りつぶされるか、トップがそれを隠蔽しようとした場合ですね。
たとえばそれが安全や信頼に関わるものであれば、顧客や株主や社会への重大な裏切りになります。
下はそういうときにどうすればいいでしょう?
もちろん内部通報しかありません。

今回の日報問題でも防衛省内部からのリークが相次ぎました。
そして、その多くは「稲田大臣は日報の非公表を了承していた」というものです。
それが本当ならば法令違反に当たりますし、国会での稲田大臣は「報告はなかった」と答弁しているので虚偽答弁ということにもなります。
しかし、特別防衛監察ではそれは「なかった」と結論付けられたわけです。
リーク情報が不確かなものだったということでしょう。
”誰かの不利になる不確かな情報を流す”というのは、組織人として本来あってはならないことですし、それが実質的な軍隊である防衛省ならばなおさらです。
今回の稲田大臣は(一応)疑惑を晴らし、自ら職を辞するという形でしたけど、”不確かな情報”をもとにしたマスコミのバッシングや野党の攻撃によって辞職に追い込まれていたとしたら、これは由々しきことでした。
内部の反乱によってトップが交代するわけですからね。

ただ、もちろん私も防衛省における内部告発を全否定するわけではありません。
今回のケースが危険かつ汚い反乱だといっているだけです。
真に国家・国民のためになる内部告発というのは、たとえば戦闘行為があったと日報に書いたのに司令部がそれを握りつぶすだとか、政府がそれを隠蔽した場合に、現場の隊員が勇気を持ってその事実を世に出すというものでしょう。
海上保安庁の事案ですが、2010年の〈尖閣諸島中国漁船激突事件〉のときがわかりやすいはずです。

今回の日報問題で一番の問題は、やはり防衛省のガバナンスなんです。
防衛省は背広組と制服組とに分かれていますが、どこから漏れていたにしろ、規律をしっかり正してゆかねば、軍隊として使いものにならなくなってしまいます。
防衛大臣や政府に公然と歯向かう軍隊などは、民主主義国家のそれではありません。
これは恐ろしいことです。
マスコミや野党はなぜそれを問題にしないんでしょうかねえ。

稲田さんも防衛省改革には熱心だっと思いますけど、次の大臣はそれを加速させるような人物でなければなりません。
安倍総理の内閣改造を楽しみにしています。
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