THE ICE 2017(後その2)

(続きです。記憶を頼りに振り返ってゆきます。)
『THE ICE』ではあまり聞かない黄色い声援のなか、”D1SK”のタオルが揺れる。
大阪公演に参加することはあっても、名古屋公演では珍しい高橋大輔の登場です!
披露したのはジャズミュージカルの『Caravan』。
このエキシビションは14年にも滑っていると思うんですけど、当時に比べて全身の動きや表情の作り方が大胆になっていて、ダンス&語学留学が伊達じゃなところを見せつけました。たったひとりで踊っているというのにゴージャスでしたね。
そして、”フィギュアスケーター”としても3Fをしっかり決め、3Lzは途中で開いちゃったものの、代名詞のアップライトスピンでは美しい体のライン。
私も久しぶりに高橋くんのスケートを観ることが出来て、ちょっと興奮しちゃいました。
一瞬で自分の空間を作って、観客の視線を釘付けにする、それも「やってやる!」って感じじゃなくて、自然とそうなるのが高橋大輔の凄味ですよね。
そのように満足したわけですけど、ただひとつ、ストレッチ不足が気になりました。
舞台でもリンクでも、怪我防止のために柔軟だけはしっかり頼みます!

高橋大輔が終われば、もうこのひとしか残っていない。
白い衣装の上に黒のシースルーをまとい、割れんばかりの拍手と歓声に包まれてリンクインした浅田真央が、しなやかかつ軽やかに舞い始める。
曲はラフマニノフの『エレジー』。
ラフマニノフといえば、浅田真央が2度の五輪で用いた『鐘』とピアノ協奏曲第2番を忘れるわけにはゆきません。
両方とも人間の内面をどこまでも深く追及してゆくことでひとつの小宇宙に出くわし、それが大爆発を起こすという、”個にして全、全にして個”という仏教の世界感にも通じる荘厳な曲であり、それが浅田真央の個性とぴたりと合うことで無限の広がりを見せる歴史的な名プログラムでした。
その曲が浅田真央に与えてくれたパワーというのは本当に大きなものがあったはずです。
現役引退直後のエキシビションに『エレジー』を選んだのも、浅田さんからラフマニノフへの感謝の印なのかもしれませんね。
それにしても浅田真央の滑りの洗練されていること。
近年の浅田さんは股関節の動きを意識しているように思いますけど、そこが誰よりも柔らかく使えるので、どのような体勢でも身体の軸がぶれず、ブレードに体重がしっかり乗るのはもちろん、方向転換も驚くほどスムースで、動きにまったく無駄がないんです。まるで伝統芸能の名人のようです。
そんな浅田さんを見つめる観客の集中力は恐ろしいほどで、その一挙手一投足を見逃すまいという気迫が会場に充溢していました。
リンクに煌めく浅田さんの滑りの一瞬一瞬が観客にとっての宝なのです。
今年の『THE ICE』は浅田さんの引退興行ということでチケットの売れ行きが凄まじかったわけですけど、ファンの思いのなかに「『THE ICE』も終わってしまうかもしれない…」という恐れと不安があったことは想像に難くありません。
07年から続く夢の祭典、その夢がいつまでも覚めないで欲しい、それこそが観客の偽らざる本音でしょう。

しかし、この日の浅田さんの『エレジー』に、私は”迷い”のようなものを感じました(一緒に行った相方も同意見)。
動きや滑りの質は高いのに、どこか気持ちが乗り切れない、そんな印象です(ジャンプは2A成功、3Loミス)。
もしかするとフギュアスケートとの関係に迷っているのかもしれませんね…。

そんなことを考えているうちに『エレジー』が終わり、場内が暗転。
アンコールを求める手拍子が地鳴りのように会場を震わせると、髪を下した浅田さんが白いドレス姿でリンクイン。
彼女らしい浮遊感のある滑りで『愛は翼に乗って』を魅せ、観客を高揚させたかと思うと、途中で立ち止まり、モニターに手をかざします。
すると、そこに浅田さんの七五三のときの家族写真から、これまでのフィギュア人生で出会ったひとたちとの思い出の写真が映し出されたんです。
本当に多くのひとたちが浅田さんを支えてきたんですねえ…。
そしてその写真集の最後は愛犬のエアロ。
…え、エアロ?
最大の功労者はエアロ!?
浅田さんのなかでのエアロの序列高っ!

そうして写真を眺め終わった浅田さんは、曲の盛り上がりに合わせて、天駆けるような連続バレエジャンプ!竜巻のようなツイズル!
この圧倒的な滑りに会場は度肝を抜かれていました。
そこからは優しい振り付けと、柔らかいイーグル、美しいスパイラルで舞い納め。
うっとりしすぎて腰が抜けました。

これでいよいよ『THE ICE 2017』もフィナーレです。
再び登場した鈴木羊子さんが『I Got Rhythm』を奏でるなか、まずは黒竜江省雑技団が驚愕の空中回転で会場を盛り上げ(鈴木羊子さんもここまで)、続いては舞さんと無良くん、長洲さんと高橋くんによる『カルメン』。4人とも気合入っていました。
『踊るリッツの夜』はウィーヴァー&ポジェ、パン&トン、そして小塚くん(ここは宮原さんとのペアだったのかも)。この5人のダンスはかなりカッコよかったです。
ここまでくればもうおわかりのようにフィナーレも”浅田真央メドレー”!
ハンガリーの民族衣装に身を包んだ宇野くんとソトニコワ、織田くんと明子さんが演じるのはもちろん『チャルダッシュ』。宇野くんの衣装がめっちゃ可愛くて会場では大人気。
そして締めくくりは浅田さんとバトルによる『蝶々夫人』。
浅田さんの気持ちの籠った演技はもちろん、バトルの海軍士官衣装似合いすぎ!
10年もペアプログラムをやっているだけに2人の息はぴったりですし、見せ場の並列2Aでも、個人プロでこのジャンプを失敗したバトルがしっかり決めるのですから、これぞまさに相乗効果。
それにしても、この『蝶々夫人』の浅田さんはスケートだけではなく、”芝居”という意味でも本当に素晴らしかったです。
芝居っ気のあるプログラムはほとんどやっていない選手ですけど、こういう才能もあるのんだとあらためて瞠目しました。
浅田真央主演の日本版『オペラ・オン・アイス』が観たい!

ブラヴォ!ブラヴォ!
観客たちが痛いほどに手を叩き、歓声を上げ、大興奮に包まれる愛知県体育館。
グランドフィナーレでは恒例の『Can't Take My Eyes Off You』に合わせてみんなでダンス。
ソチFSのフィニッシュポーズには笑いがこぼれていました。
最後は『THE ICE』Tシャツに身を包んだ出演者たちが次々とリンクを回ってゆく、華やかで、ちょっと寂しい時間。
今年も本当に楽しかったあ、来年もよろしく!
観客たちはそんな思いで演者たちに手を振ります。
そして誰もいなくなるリンク。
けれども観客からの拍手は止みません。
すると、それに応えるように鳴り響いたのは『メリー・ポピンズ』!
あの特徴的なドレスを身にまとい、傘を手にした浅田さんがリンク狭しと滑り回り、チム・チム・チェリーでは舞さんとの可愛らしい姉妹ダンス、最後は出演者全員が加わっての大団円!
Supercalifragilisticexpialidocious!

『THE ICE』は浅田真央の笑顔に会いに行くショーであり、観客の大人たちが子供のような笑顔を見せるショーなんです。
まさに夢の舞台、夢の時間。
そしてその夢にもいつかは終わりがくる。
その終わりから目を背けるように、今年の私は記事をダラダラと書いてしまいました。
でも、私は子守りのミス・ポピンズにまだまだ家にいて欲しい。
我々を子供にする魔法とともに。
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