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2017GPF女子シングル(前) 涙を力に

この2017GPFは、長らく続いていた日本女子の進出が危ぶまれていたものの、GPS最終戦の結果で樋口新葉さんの出場が決まり、さらにはメドベージェワの欠場によって宮原知子さんが繰り上がったため、ホーム名古屋開催での体裁はなんとか整いました。
チケットを購入していたお客さんが喜んだのはもちろん、それ以上にテレビ朝日が小躍りしたことでしょう。
ただし、日本女子は5番手・6番手というのもまた事実ですから、厳しい戦いが待っているのは確実です。
”五輪前哨戦”という意味もある大会で、いまの日本女子の世界での位置づけを確認することとしましょう。

トラブルからの復帰明けとなった今季、30歳とは思えぬ活躍をしているカロリーナ・コストナー(イタリア)ですが、SPではコンビネーションが3T+2Tになるミスで6位と出遅れ。
それでもスコアは72.82(TES35.36・PCS37.46)と、首位と約4点しか離れていません。
ジャンプ構成は弱いのですが(3Lo)、流れるようなジャンプと誰にも真似できないステップシークエンス、そして表現面での確固たる評価は若手には脅威ですね(スピンの加点の高さは私には疑問)。
ただ、やはりFSではスタミナ面での衰えは隠せず、後半冒頭が2A+1Lo+2S(3S予定)になると、残りのジャンプの質も落ちてしまいました。今季はだいたいそんな感じですね。
ただ、終盤のコレオからステップにかけての流れは他の選手とは別次元の世界で、ジャンプパートの失速などすぐに忘れさせます。
コストナーはスケーティング技術が特に評価される選手ですけど、その凄さというのは”踏み込みの力みがない”のに加速できるというところと、超スローで滑っても体幹とブレードがまったく揺るがないところでしょうね。これは誰も真似できません。
フィギュアスケートではプログラムの世界観を広げるためには滑りに”緩急”を付ける必要がありますが、その”急”を適格に表現するための踏み込みのパワーを持っている女子選手は数少ないんです。
そして、その数少ない選手だって踏み込むためにはある程度”力む”のですが、コストナーにはそれがないので滑りがより洗練して見えるわけです。
さらに”緩”の部分では、普通の選手はただ単に力なく緩むのですが、コストナーの”緩”には筋が通った強さがあって、これがまた演技を際立たせるわけです。
彼女はPCSがとても高く評価されている選手ですが、ひょっとするともっと評価されるべきなのかもしれません。
繰り返しますが他選手とは次元が違います。
FSは141.83(66.87・74.96)、合計214.65。
ジャンプ構成が弱いので、スコアを見るとちょっと高く感じますね…。

今季私が最も瞠目した選手は復帰のコストナーでも新星ザギトワでもなく、マリア・ソツコワ(ロシア)です。
ソツコワは公称173センチという女子シングルでも最長身の選手であり、その体躯を生かした演技に特徴のある選手でもありますが、シニアデビューの昨季はその長身が災いしてジャンプの回転不足が目立ちました。
長身女子選手がジャンプに苦しむのは女子フィギュアではよく見る光景ですし、シニアに上がって身体が大きくなればなおさらで、残念ながらそれが改善されることはほとんどありません。
それなのに今季のソツコワは試合ごとにジャンプの質が高くなり、回転不足もほとんど見られなくなっているんす。
助走からスムースに踏み切れるようになったのはもちろん、単純な足腰のバネというのも感じますね。フィジカルの強さをジャンプに生かしたといってもいいでしょう。こういう選手の存在は世界中の長身選手に希望を与えます。
そんなソツコワは、SP『白鳥の湖』でも3Lz+3T 3F、(後半)2Aを綺麗に揃えて74.00(40.11・33.89)で4位。
PBを4点も更新して私もちょっとびっくりしましたけど、もともとスピンもステップも”そつ”なくこなしていた選手だけに、全体的な技術と演技が磨き上げられてきた今季はこれくらい出ても不思議ではありません。
特別いいところがある選手ではありませんが、苦手のジャンプを克服し、弱点がなくなったことで、”安定感はあるが地味な選手”から”平均値の高い好選手”に変貌を遂げましたね。
表彰台も現実味を帯びるなか始まったFSではスタイルの良さを生かしたシックなグレーの衣装に身を包み、美しい『月の光』を披露。
タノ3Lz+3Tで始まり、3F、大きくて柔らかいビ-ルマン、身体の使い方も上手くなった優美なステップ、3Loはやや強引。
勝負の後半はタノ3F+1Lo+3Sを確実に、タノ3Lzはビューティホー、大からか滑りのコレオで繋いで2A+2、2A、長身選手とは思えぬスムースなキャメルスピン、長い足が際立つコンビネーションスピンでフィニッシュ。
うっとりしました。柔らかい月の光を感じました。選手として一試合ごとにスケールアップしていることを証明しましたし、さらなる飛躍も予感させる出来栄えでしたね。
FSは142.28(73.59・68.69)、合計216.28。
今後はリスクを恐れず後半ジャンプを増やしてゆけば(SP・FS両方)、もっと上が狙えると思います。
身体も頑健そうですし、成長期が終わった(おそらく)身体でもジャンプが安定しているので、長く活躍するでしょうね。
ロシア女子は現役期間が短い選手が多いので、ソツコワには期待しています。

夢の五輪出場に向けて、ここまでいいシーズンを過ごしている樋口新葉さんは、このGPFでも好成績を収め、”五輪代表有力候補”の地位を盤石にしたいところ。
そんな欲がプレシャーになりかねないSPですが、大きな2Aでスカッとスタートすると、後半の3Lz+3Tを決め、3F(エッジが微妙)を着氷すると自然に笑顔が浮かびます。
ステップシークエンスでは樋口さんならではのはっちゃけた『ジプシーダンス』で会場を沸かせ、本人もほっとした表情でフィニッシュ。
緊張からか動きにいつものキレがありませんでしたけど、まとめたのは本当に立派でした。
SPは73.26(39.08・34.18)の5位ですが、上位とほとんど点差もなく、表彰台も十分狙える位置です。
そうして始まったFSでは2Aを落ち着いて決めるも、3Lz+3Tではやや軸が曲がっていてちょっと硬くなっているかと思ったら、不安げな助走から2Sに。
さらに後半冒頭が2Lzになる手痛いミス、3Loはしっかり降りるも、2A+3T(リカバリー)はややオーバーターン、3F+2T+2Loは綺麗に決めたように見えるもフリップのエッジが微妙、見せ場のステップでも動きが重く、演技の流れを取り戻すことができませんでした。
スタミナも気持ちもに切れてしまいましたね…。
FSは128.85(62.67・66.18)、合計202.11。
初出場のGPFは残念ながら最下位となり、涙を流す樋口さん。名古屋開催だっただけに忸怩たる思いがあったことでしょう。
この不出来の原因について本人は「ジャンプのことを考えすぎてしまった」とコメントを残し、”ジャンプの不調”という分析をしていましたけど、私が個人的に気になるのは、試合ごとに演技全体のスピードとキレが落ちていることです。
心もち体もふっくらしているように見えますしね。
ただ、もちろんそれは樋口さんが節制していないというのではなく、シーズンに入ると移動と試合の繰り返しで、みっちりとした練習時間が取れないのではないか、ということです。
樋口さんはスピードとキレが持ち味の選手ですから、やはりコンディション調整が重要だと思うんです。
ですから、全日本に向けて気合を入れて練習してゆけば、自然に体も絞れるでしょうし、コンディションが上がればメンタルも前向きになるというものです。
涙を力に変えて頑張って!
(優勝が決まる後編に続きます。)
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