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歌舞伎は国民的関心事なのか

新春というのは”日本らしい目出度さ”というのをみなが求めるせいか、1年の内で最も伝統芸能にスポットが当たる時期でもありますが、そのなかでも最もメディア露出が激しいのは”歌舞伎”でしょうね。
東京と大阪で恒例の初春公演が催されているというニュースはもちろん、テレビでも歌舞伎関連の番組が本当に多い。

なかでも今年(2018年)は、高麗屋が37年ぶりの3代襲名をするということで、二代目白鸚(九代目幸四郎)と十代目松本幸四郎(七代目市川染五郎)とが八代目市川染五郎(四代目松本金太郎)の祖父・父・孫が連日のようにメディアに登場するわけですが、この1月3日にはNHKでその特別番組を編成したり、新聞各紙が特集記事を載せているのですからちょっと驚きました。
この扱いはまるで”国民的関心事”のようです。
しかし、本当にそうなのでしょうか?

色んな統計データを見ると、”歌舞伎を観たことがある”という日本人は2割以下ですし、その内の4割は1度しか観たことがなく、観に行ったきっかでも最も多いのは学校行事(3割以上)なんです。
多くの日本人は歌舞伎に興味がないといっていいでしょう。
そして高麗屋は有名な屋号ではあるものの、数多くある歌舞伎の一門のひとつにすぎないのですから、そこに関心がある日本人というのはほんの一握り、いや、ひとつまみといった方が正しいわけです。
それをマスメディアが大々的に扱うことに、私は違和を覚えて仕方ありません。

しかも、メディアの歌舞伎役者への扱いというのはまるで”特権階級”のそれです。
今風にいうと”セレブ”ですね。
日本には伝統芸能というのは数多くありますけど、歌舞伎のような扱いをされているものはないといってもいいでしょう。
歌舞伎はいつからそういうポジションになったのか私は不思議に思いますし、たまに深く考えたり、調べたりすることもあるんです。

歌舞伎が現在のような形になったのは江戸時代・元禄(1688年~1704年)の頃だと考えられています。
商品経済の発達に伴い豊かになっていった都市部の町人が娯楽を求め、それに応えたのが歌舞伎というわけです。
それまでにあった猿楽(能)や人形浄瑠璃を当世風に演じたり、歌舞伎独自の演目や演じ方も生まれ、江戸・大坂・京で娯楽文化として根付いてゆくわけです。
市川團十郎や坂田藤十郎といった人気役者が登場したことも大きかったでしょう。
それからも歌舞伎や新たな境地を開拓していって、娯楽文化としての地位を確固たるものにしていった歌舞伎は、町人のみならず武家にも愛されるようになり、江戸の武士だけではなく、参勤交代で江戸にやってきた地方武士の憧れでもあったようです。

そして、この”都市部でしか観ることができない”という希少性は江戸時代だけではなく、文明開化の後も続くわけです。
歌舞伎の地方巡業というのもないわけではありませんでしたが、その数は少ないですし、有名な役者が地方に来ることもありません(舞台装置や出演者の数も問題もあって演目にも制限あり)。
地方の人間にとって歌舞伎も歌舞伎役者も特別なものでした。
現代のブロマイドともいえる役者絵(浮世絵)が江戸土産として人気だったのもそのためでしょう。

そんな歌舞伎役者の芝居を日本全国のひとが親しめるようになったのは、実は歌舞伎ではありません。
映画なんです。
”日本映画界初のスター”とも呼ばれる尾上松之助(1875年~1926年)は小さな名跡の歌舞伎役者です。
映画の草創期はまだ海のものとも山のものともわからないメディアなので、大名跡の役者が出演するということはありませんでしたが、小さな名跡とはいえ歌舞伎役者を映画スターにすることで、映画に箔をつけたということもできます。
そして、その後、映画産業が大きくなると大名跡の歌舞伎役者も続々と出演するようになるわけですが、”映画に箔をつける”という映画会社のやり方は継続してゆきました(テレビドラマもそうですね)。

ここからは私なりの考えですが、現在の歌舞伎役者のステータスというのは映画会社、特に松竹が作ったものではないかと思うんです。
歌舞伎役者はスペシャルなもので、そんな役者が出演する自分の会社の映画もスペシャルなものだ。
そして、その歌舞伎役者が出演する歌舞伎座(松竹が経営)もスペシャルなものだ。
そんな論法です。

この私の解釈は間違っているのかもしれませんが、いまの歌舞伎と歌舞伎役者のメディアの扱いというのが異常だというのは確かです。
私は歌舞伎が嫌いだからこんなことを書くのではありません、ただ素直に歌舞伎という芸能と親しみたいだけです。
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