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2018冬季五輪・フィギュア女子FS(後) ロシア女子の凄味に震える

(続きです。)
SPでメドベージェワに1.31差をつけたことで、”ノーミスならば優勝は確定的”という状況でFSを迎えた”真・天才少女”アリーナ・ザギトワ(ロシア)ですが、今季がシニアデビューの彼女が大舞台未経験だということも忘れてはなりません。その重圧に打ち勝ってザギトワ時代を切り開けるかどうか楽しみなところ。
ファンファーレが高鳴るように始まった『ドン・キホーテ』、まずは華やかな笑顔と動きのコレオ、バネを感じるキャメルスピンを挟んでのステップシークエンスではいつもと変わらぬ動きで、緊張もさしてしていない様子。大物ですね。
ただ、難しい振り付けのなか、動きにたどたどしさがあったり、身ごなしがまだ洗練されていなかったりしますけど、まだ15歳なので仕方ありません
そして丸々ジャンプパートにしている後半、冒頭のジャンプが勝負を握るところですけど、3Lzがやや詰まってコンボにならないミス。やはり緊張していたのか、こうなるとミスの連鎖が怖い。
しかし続く2A+3Tをばっちり決めると、3F+2T+2Loも軽々、伸びやかなレイバックでいったん休んで、次はコンボをつけねばならぬ3Lzですが、ここを+3Loに!
無難に+2Loにしなかったところにザギトワの凄味と技術力の高さを感じます。なんて選手だ!
そこからは腕で彩をつけての3Sと3Fをしっかり揃え、2Aを確実に降りると、最後は優勝を祝う紙吹雪がまうようなコンビネーションスピンでフィニッシュ!ブラヴォ!
五輪という大舞台でこの高難度構成を完遂させた15歳には手放しの賞賛しかありません。フィギュアの歴史に美しい1ページを作りましたね!
FSは156.65(TES81.62・PCS75.03)、トータル239.57でPB。金メダルスコアといっていいハイスコア。
確かに見事な演技でしたけど、こんなにスコアが出るほどの演技だったんでしょうか?GOEとPCSの評価には疑問を感じます。2年前のメドベージェワがそうだったように、ジャッジは”将来の期待値”をスコアに盛り込んでいるとしか思えません。演技の完成度や表現面ではまだまだの選手だと思います。
ジャッジは”いま”を見て欲しいものです。
(※このザギトワへの高すぎる評価は欧州選手権から。細かいミスがあってもほぼまとめたGPFが223.30。ノーミスの欧州選手権が238.24。)

金メダル争いはロシアの2人に任せておいて、我々日本のファンが気になるのは銅メダル争い。
宮原さんが222.38で暫定2位に座るなか、いよいよ登場するのが最大の強敵であるケイトリン・オズモンド(カナダ)。
オズモンドが宮原さんに勝つために必要なFSのスコアは約144点なんですけど、オズモンドのPBは142点ほどなので、かなり有利。しかも緊張しいのオズモンドにはいわゆる”自爆癖”もありますからね。
しかし、オズモンドはそんな意地悪な予想を跳ね返すように、目が覚めるような3F+3Tでスタートすると、ゴムまりのような2A+3T、エッジが微妙な3Lzは軽くステップアウトしたものの勢いを感じさせる序盤戦。
そこからしなやかなスピンで『ブラックスワン』の雰囲気を醸し出し、苦手とする後半に突入するも、3Lo、3F、3S+2T+2Lo、2Aと立て続けに質の高いジャンプを揃える圧巻の内容。
そこにはもう失敗に怯えて混乱するケイトリンはいませんでした。
ジャンプの成功で乗ってきたせいか、終盤の息切れもなく、鮮やかなスケートと華やかな演技でステップとコレオを仕上げたオズモンドは喜びを爆発させるようなコンビネーションスピンで満面の笑顔!
悲劇的なサスペンス映画のはずの『ブラックスワン』が歓喜の世界にかわりました!
おめでとう、素晴らしい演技でした。弱かった自分に打ち勝ちましたね。敵ながら天晴れとしかいいようがありません。
私も素直に負けを認めました。
FSは152.15(76.50・75.65)でPB、トータル231.02もPB。
この結果、宮原さんを上回っての暫定2位、残り1人なのでメダルも確定させました。おめでとう。
不可解なPBの伸びにはちょっと呆れちゃいますけど、それは宮原さんも同じことですから、ケイトリンのスコアだけを批判するわけにもいきません。SP・FSの内容を見ればケイトリンが上だと思います。2人にはジャンプの質とスケーティングの質にかなりの差があるので仕方ありません。
自爆癖を乗り越えたケイトリンを潔く称えましょう!

そうしていよいよ最終滑走、世界女王エフゲニア・メドベージェワ(ロシア)の登場です。
しかし悲しいかな、PB(国別対抗を除く)である154.40を出してもザギトワを逆転することはできません。
宮原さんやオズモンドのようにスコアが急に伸びればわからない、という考えもあるかもしれませんが、メドベージェワはGPEもPCSもすでに上限に近いくらい出しているので、伸びしろはほとんどないんです。
そんな絶望的な状況はメドベージェワもわかっているはずですから、私は彼女の心理状態が本当に心配でした…。
ところがやはり世界女王は強かった。
怪我明けでジャンプが不調ながら出だしの3F+3Tと3Lz(エッジ微妙)を気持ちで跳ぶと、芸術的なスピン、得意の小芝居を散りばめてのステップは振り付けとボディコントロールがお見事。
勝負の後半も3F、3Lo、2A+2T+2T、3S+3Tとゾーンに入った集中力でジャンプを揃えると、やや苦手とする最後の2Aもしっかり着氷!なんという意地、なんという誇りの高さ!
終盤のコレオでも『アンナ・カレーニナ』の物語をしっかい演じ切り、締めは繊細で情感の籠ったスピンを2つ重ね、ノーミスの演技。
感極まった表情で大歓声を浴びたメドベージェワはまさに女王でした。
一切の迷いを感じさせない演技に私も強く胸を打たれました。最大の敬意を払いたいと思います。
ハラショー!ジェーニャ!
女王の会心の演技に魅了された観客が奇跡の逆転優勝を願うなか出てきたFSのスコアは156.65(79.18・77.47)でザギトワとまったく一緒、しかしSPの差があってトータルは238.26で2位。
しかしキスクラのメドベージェワは悔しさよりも満足したような表情を浮かべ、そこには敗者の姿はありませんでした。
表彰式で同門の妹弟子であるザギトワを心から称える態度といい、本当に立派だったと思います。

こうしてこの2018冬季五輪は、基礎点のザギトワが芸術性と完成度のメドベージェワを制するという結果に終わりました。
私個人はPCSに差をつけてメドベージェワの優勝でもよかったかなと思いますけど、評価基準は様々でしょうから、今回の結果もそう否定はしません。それほどハイレベルで僅差の戦いでした。
ですから、それを見せてくれた2人の選手には賞賛と感謝の言葉しかありません。
2人にはロシア女子がなぜ強いのか、その理由が詰まっています。
技術的な追及、得点を取るための細かい努力の積み重ね、そして試合での気迫と執念。
”フィギュアに命をかけている”、それがロシア女子の本質だと思います。他の国の選手はとても敵いません。
ロシア女子の覇権は当分揺るがないでしょうね。

しかし、そのロシア女子に勝とうとする選手が出てきたとき、女子フィギュアは次の進化の段階を迎えるはずです。
次の4年間はそれに期待しようではありませんか。
進化の旗手が日本から出てくることを!
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※ジャンプを全て後半に持ってくるザギトワのプログラム構成には「点取りだ」とか「フィギュアらしくない」という声もあるようですし、IOCも後半ジャンプ制限に動くようですが、私個人はザギトワの戦術を否定する気にはなりません。フィギュアスケートも競技ですからね。
ただし、PCSの評価は下げられるべきだと思います。表現パートとジャンプパートがあんなにはっきり分かれていては、ひとつのプログラムとしてはやっぱりバランスが悪いと思いますぜ。
IOCが手をつけるべきはPCSの評価方法なんじゃないでしょうか。
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