2018米朝首脳会談、大いなる肩透かし

「リトルロケットマン!」「おいぼれの狂人!」
そう口汚く罵り合っていた米朝が首脳会談の開催を決めたとき(2018年3月)、世界中は唖然とし、それ以後も半信半疑でしたけど、ついに今日6月12日、それが実現することとなりました。

会談の焦点はアメリカが求める”完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)”。
北朝鮮は90年代から”核”を外交カードとしてチラつかせ、それを放棄すると約束しながらアメリカや韓国から様々な支援や譲歩を引き出してきたわけですが、いずれも素振りと嘘で逃げ延びてきただけに、トランプ政権としても”もう騙されないぞ”という姿勢を堅持してきたわけです。

しかし北朝鮮からすると核を完全に放棄すれば、その隙にアメリカに叩き潰されかねない恐怖心がありますから、”キム一族体制の維持”だけは確約が欲しい。

会談前は両者とも互いの要求を受け入れる用意がある、とのシグナルを送っていたものの、実際にそれが実現できるかどうかはかなり不透明でした。
秘密国家である北朝鮮を隅々まで調べることは不可能ですし、政権交代のあるアメリカでは前政権の約束がそのまま守られるとも限りません。
そのような状況のなか、アメリカの世論調査でも会談に賛成するひとが6割もいたものの、具体的成果はないだろうと予測しているひとが6割という複雑な結果が出ていましたけど、世界全体がそんな感じだったのではないでしょうか。

それでも会談場所であるシンガポールに入ったトランプ大統領は「エキサイティングな一日になる」(6月10日)と自信満々。
5月には一端会談の中止を宣告して北朝鮮を慄かせ、北が泣きついてきたところで開催を再約束するという手際を見せたトランプ大統領だけに、本番でもなにか秘策があるのか。
会談直前の記念撮影でも、キム・ジョンウン委員長と握手をするトランプ大統領は余裕綽々でした。
期待感は大いに高まります。

…しかし、署名された共同宣言の内容はというと、
①平和と繁栄を求める新たな米朝関係の構築に取り組む。
②朝鮮半島での恒久的で安定的な平和体制の構築に向けて力を合わせる。
③北朝鮮は〈板門店宣言〉を再確認し、朝鮮半島の完全な非核化に向けて取り組む。
④朝鮮戦争での捕虜・兵士の遺骨回収に取り組む。
たったこれだけです。
いわゆる”大枠合意”ですね。CVIDどころかなんの具体性もありません。
トランプ大統領が「これから何度もキム委員長に会うことになるだろう」といっていたように、話し合いは今後段階的に詰められてゆくのでしょう。今回はセレモニーにすぎないというわけです。

むしろ大事だったのは署名にない口頭の部分で、北は非核化プロセスを迅速に始めること、アメリカはキム体制の保障を約束したそうです。
署名時のキム委員長は肩で息をし、緊張と疲労を露わにしつつも、その表情は達成感に溢れていましたけど、一番欲しいものを手に入れられたということでしょう。
とりあえず当面の武力攻撃は避けられましたし、トランプ大統領は米韓軍事演習の中止の意向も示しましたから、これでキム委員長も枕を高くして眠れるというものです。

この結果から”北朝鮮の勝ち”とジャッジする声もあるようですが、それにしてはトランプ大統領に余裕がありすぎます。
「北への経済制裁は継続する」と明言しているので、その制裁によって北の具体的行動を促すという方針なのでしょう。
これまでのアメリカは経済制裁と軍事圧力の二刀流でしたけど、今後は経済制裁のみで北をコントロールするというわけです。
実業家のトランプ大統領は「軍事演習は挑発的でコストもかかる」とも語っていましたし、北は経済制裁がかなり効いているという分析もありますからね。

現在、トランプ大統領は11月の中間選挙(事実上の大統領信任選挙))に向け、世界を敵に回した輸入規制を表明するなど、なりふり構わない”人気取り”を行っていますが、唐突なまでの北との対話もその一環と見られています。
そしてその人気取りでいえば、1回の首脳会談で終わるよりも、何度もそれを繰り返し、11月まで話題をかっさらった方がいい、という判断なのかもしれません。
経済制裁によって北の具体的行動を段階的に促すことは、トランプ大統領からすれば定期的に成果を得ることになります。

むろんこれは捕らぬ狸のなんとやらですが、そうでもなければキム委員長を可愛がるように賞賛したトランプ大統領の余裕は説明ができません。
なんといっても北朝鮮に騙された過去の大統領をバカにしてきたのはトランプ大統領本人なのですからね。
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