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踊らせない阿呆

私は徳島の阿波踊りを実際に目にしたことはありませんが、テレビで映されるその様子はとても煌びやかで賑やかなものですし、見物客も多く詰めかけ、熱気と盛り上がりが画面越しでも直に伝わってくるようでした。
テレビ放送でいえば、四国のみならず、関西でも扱われることが多いので、”日本の夏を代表するイベント”という印象を持っているひとも多いはずです。
ですから、〈徳島市阿波おどり〉が4億3千万円以上もの累積赤字を抱えていると昨年(2017年)、『週刊現代』が報じた際は本当に意外でした。
てっきり収支はプラスだと思っていましたからね。

『週刊現代』はその赤字の原因について、主催のひとつである『徳島新聞』が人気席のチケットを買占めていることと、看板広告の集稿・制作を独占していることなどを指摘していました。
チケットの販売についていうと、徳島市阿波おどりのそれは発売開始時間からまさに瞬殺で売り切れるというのは以前から有名でしたけど、それが『徳島新聞』の買占めのせいだというのはなかなかショッキングなスクープでした。
地元でも噂としては存在していたらしいのですが、『週刊現代』の報道を受けて、徳島市議が調査したところ、それが事実だということがわかり、市や議会、市民の間でも問題が共有されるようになったようです。

それに対して『徳島新聞』側は「主催者として人気のない会場のチケットを確保して販促に貢献した」「一般からのチケット購入に関する苦情はない」したものの、もうひとつの主催者である〈徳島市観光協会〉が「『徳島新聞』が確保しているチケットは報道されているより多い」「一般からの苦情もわずかというものではない」といって『徳島新聞』を否定したことから、騒動は内部対立の構図を描き始めます。

ここでちょっと興味深いのは〈徳島市阿波おどり〉は、徳島市観光協会と徳島新聞の共同主催だったことですね。
この徳島市阿波おどりと同じように有料桟敷を作っている他の大きなお祭りも、そのほとんどは市の観光協会が主催しているものです。
観光協会というのはだいたいが市の外郭団体(公益社団法人)ですから、市が主催しているといってもいいでしょう。
それだけで十分なはずなのに、そこに地元新聞社が関わっているというのはけっこう珍しいと思います。

そして、新聞社というのは報道機関とはいえ、私企業ですから、やはり利益を追求するものです。
『徳島新聞』がチケットを販促に使ったり、広告看板だって自分たちのいいように使おうという気になっても不思議ではありません。
『徳島新聞』が”悪”だというよりも、私企業として当たり前のことをしているだけといっていいでしょう。
ただ、ここで大事なのは、祭りというのは”みんなのもの”だということです。
誰かだけが儲かる、というのは祭りの精神を逸脱しています。
ですから、私企業が主催に名を連ねること自体が間違っているわけです。

祭りというのはそもそも市民が自主的に始めるものですし、〈徳島市阿波おどり〉だってもともとはそうに違いありません。
しかし、規模が大きくなるにつれて、市が事業として後援するようになり、さらに外からお客さんが観にくるようになると、警備費やらがかさむため、有料化が進むというわけです。
それでも忘れてはならないのが、祭りは利益を生むためにあるわけではないということです。
利益は結果として出るというだけです。
ところが、報じられている通りならば、『徳島新聞』は利益を求めてしまっています。
そうなればもはや徳島市は主催から『徳島新聞』を外すべきでした。
そして、観光協会には祭りの収支を透明化することを厳命し、市民が気持ちよく踊れるように、観光客がより祭りを楽しめるように、努力させるべきでした。

ところが、昨年、遠藤彰良徳島市長が決断したのは観光協会の解体。
これにはびっくりしましたね。
遠藤市長からすると、ガンは観光協会ということみたいです。
市の調査によると、観光協会にも「契約書や請求書などの一部が保管されておらず、裏付け書類の提出を受けないまま精算を行っており、不適正な会計処理があった」との問題があったみたいですけど、『徳島新聞』への調査はした様子がないのですから、これでは片手落ちとしか思えません。

そうして今年2018年からは市と『徳島新聞』の共催になった徳島市阿波おどりですが、なんと遠藤市長は祭りのハイライトである〈総踊り〉の中止をも決断するんです。
この総踊りというのは、いくつもの有名な連(踊り手グルーブ)が大通りに集まって踊り歩くもので、我々がテレビでよく見る阿波踊りの風景そのもののあれです。
それを失くすというのは祭りの魅力を半減させる愚行にしか思えませんが、遠藤市長によると、「総踊りの会場以外のチケットが売れないので、総踊りをなくすことで、他会場に客を誘導し、全体としての利益を上げるため」とのことでした。
ちょっと何をいっているかわからないような、多くのひとが理解に苦しむ話ですが、予想通りといいますか、今年の総収入はダウンしたそうです。
遠藤市長はどういう言い訳をするのでしょう?
徳島市の踊り手たちは総踊りに参加することが目標とのことで、がっかりした市民も多いようですし、対立も生まれそうですね。
(※一部の連が桟敷のない通りで総踊りを強行。)

傍から見ていると、遠藤市長は祭りを守るのではなく、『徳島新聞』を守っているように見えます。
そもそも『徳島新聞』が主催になっている必然性などないはずですし、チケット販売や広告看板のやり方を公平にした上で、会計を透明化することが先決だったはずです。
それでもなお赤字が出るようだったら、不人気会場の見直しやチケット価格の改定などで黒字化を目指すというのが常識的な判断だったのではないでしょうか。

阿波踊りといえば「踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ損々」という昔からの言葉がありますが、市民に損をさせる”踊らせない阿呆”が出現するとは先人たちも想像しなかったでしょうねえ。
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