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2018GPSロシア大会 羽生結弦の完璧な物語

この2018-19シーズン、羽生結弦が己のフィギュア人生を辿るようにして選んだプログラムはSP『秋によせて』とFS『Origin』(『ニジンスキーに捧ぐ』のアレンジ)。
特に『Origin』はエフゲニー・プルシェンコへの強い憧れと同時に、自分が”皇帝”に比肩する存在になったという自負を感じさせる選曲です。GPSのアサインでロシア大会を選択したこともその宣言といっていいでしょう。
現在の皇帝が誰なのか見せつける戦いがやってきました。

GPS第5戦となるこのロシア大会・男子シングル、羽生結弦の対抗馬は不在ですが、表彰台候補としては地元のミハイル・コリヤダとカナダの新エースとなったキーガン・メッシングが出場。
2人とも実力者ですし、他の選手と比べて頭ひとつ抜けているはずでしたけど、まずコリヤダがSPから3T、3Lz+2T、1Aという大遭難で69.10(TES27.74・PCS41.36)。本人も会場も凍り付いていましたね…。
気合を入れ直したFSでは4Sと4T+3Tをクリーンに決めて抜群のスタートを切ったものの、3A+1T、1A、2Lo、3連続が2Lzからになるなど、地元ファンを裏切るような内容。スコアは156.32(70.82・70.82)、合計225.42で4位。
もともとジャンプが不安定な選手ですけど、それにしても酷い。

スケートカナダでは2位に入り、今大会で表彰台ならファイナルの可能性もあったキーガン・メッシングも、SPでは4T転倒などがあって73.83(33.87・40.96・減点1)。
巻き返したいFSでも得点源の4Tで両方転倒してしまって146.92(66.70・80.22)、合計220.75で5位。
今年のファイナルはバンクーバー開催だっただけに、進出が絶望となって本人もがっかりしているでしょうね。
毎度のごとくFSで順位を落としてしまいますけど、そこを克服せねばカナダのエースとは呼べませんぜ。

こうした実力者の不調の間隙を縫って輝きを放ったのは友野一希くん。
SPでは4Sと3F+3Tのバランスが悪かったもののなんとか着氷させると3Aはよし。
振付師のミーシャ・ジーっぽい上半身の大胆さで『ニューシネマパラダイス』に熱い思いを込め、まずまずまとめた演技で82.26(42.47。39.79)。
初メダルも見えていたなかでのFSでは、その緊張に抗いながら冒頭4Sは着氷にターンが入るも+2Tに、単独4Sはお見事!
3A+1Eu+3Sも力技で揃え、中盤のターンからの3Loは高い技術、後半ボーナスパートでは3Aがオーバーするも無理矢理+3T(URか)に、3F、スピンを挟んでの3Lzは成功!よく食らいついた!
全体的にも『リバーダンス』の高揚感がよく出ていましたし、疲れの見えた終盤のコレオでもよく粘り、友野くんらしい気持ちの籠ったプログラムでした。
FSは156.47(77.89・78.58)、合計238.73。
憧れの羽生結弦と初めて一緒に出場する国際大会ということでアドレナリンが出たのか、ミスを最小限に留める執念は特筆すべきものがあったといっていいでしょう。本当に生きが良かったです。
友野くんは決して才能のあるスケーターではないかもしれませんが、自分の個性を生かした演技と勝負に賭ける気持ちの強さはまさに一流ですよね。

複数種類の4回転を持ちながらもそれがなかなか揃わず、成績も上がらなかったモリス・クヴィテラシヴィリ(ジョージア)。
そんな彼が今大会ではSPで4S+3Tと4Tを豪快に決めての89.94(51.48・38.46)。
FSでも大柄な身体から迫力のある4S+3Tを決めてスタートすると、後半ボーナスパートで4T+2Tとお手つきしながらの単独4Tを跳ぶという奮闘を見せての158.64(81.20・77.44)、合計248.58。
長い手足を躍らせる丁寧な振り付けにも好感が持てますし、ポテンシャルの高いいい選手です。
ただ、全体的にスピードがないのが気になります。
それが改善されてくればGOEやPCSも上がるでしょうし、より怖い選手になるはずです。

この結果、2位がクヴィテラシヴィリで3位が友野くん。2人ともGPS初表彰台おめでとう!

フィギュア人生を辿るといえば、羽生結弦がGPS初優勝を果たしたのもここモスクワのメガスポルトアリーナ。
それから7年の時を経て絶対王者へと進化した羽生結弦が見せたSP『秋によせて』は、この大会の歴史に偉大な1ページを刻んだといっていいでしょう。
氷に図形を描くことから始まったフィギュアスケートは、いつの頃からかその演技そのものを図形のように完成させることを目指し始めたわけですが、明確なラインで構築される羽生結弦の演技の美しさというのはまさにその進化の最先端です。
SP『秋によせて』でも美しいマイムから始まり、滑りの流れに溶け込んだ4Sと3A、後半への繋ぎも細かなフットワークで気分を高め、4T+タノ3Tはやや降りが強引になるも振り付けでカバー。
そこからはしっとりしたキャメルスピンと激しいシットスピンで曲に大きな抑揚をつけ、音楽の盛り上がりとともに気持ちも踊るステップでは深いエッジと自由自在のボディコントロールで「天飛ぶや軽の道は我妹子が…」と歌いたくなるような世界。
結びも氷細工のような繊細なコンビネーションスピンで鳥肌もの2分40秒。
私は途中からは競技を忘れ、芸術作品として鑑賞していました。
前のフィンランド大会より格段に良くなっていましたし、もうこの『秋によせて』は羽生結弦のプログラムになりましたね。それも代表するプログラムのひとつに。
花束を届けたフラワーボーイも魅了されたようになっていましたし、その子をハグする姿も美しい羽生結弦(去年と同じ子だったようです)。SPは110.53(62.44・48.09)。
私はもう”完璧”と賞賛したいところですけど、羽生結弦本人は細かい修正点があったことから「パーフェクトとはいえない」と気を引き締めていました。
この姿勢こそがパーフェクト!

この圧巻のSPがあり、FSでもとんでもない演技をしてくれるだろうという期待が高まるなか、迎えた翌日、我々に飛び込んできたのは「羽生結弦、公式練習で怪我」という信じたくないニュース。
4Loの着氷で右足首を大きく捻ったというのです。
出場も危ぶまれましたが、王者の誇りか、プルシェンコとの絆か、FSのリンクに姿を見せた羽生結弦。
6分間では切れ味するどい4回転を披露していたものの、4分間のプログラムに耐えられるかどうか…、我々はもう祈るしかない。
そうして始まった『Origin』、自分に対する不満や迷いを感じる助走からの4S!怪我が嘘のように美しい飛翔!
続いての4Tも完璧!なんという男だ!
両方とも繋ぎが少なく、やはり怪我の影響はあるのでしょうけど、それでもジャンプの質を保つのが羽生結弦の真骨頂。
ステップでもエッジの迫力が凄まじく、パワーと躍動感は本家プルシェンコを思わせます。
ほんと見応えのあるシークエンスになっていました。前回大会からわずか2週間だというのにここまで仕上げてくるとは思わなかった。
中盤は繋ぎのような3Loと3Fを軽々跳んだものの、勝負のボーナスパートでは4Tを堪えるようにしてからの+1Eu+3S、やはり足がついてこないか…。
それに気づいた観客からも大きな手拍子が起こり、それに勇気をもらいながら跳んだ3Aは珍しく転倒、3連続予定も1Aになって苦笑い。
ジャンプ構成を突貫工事したせいもあるでしょうし、いまの状態なら仕方ない。
それでもコレオでは鋭い視線を飛ばすハイドロ、シットスピンも切れ味鋭く、大きくターンしてからのコンビネーションスピンも気迫満点でリスペクト・プルシェンコ!そして天に手のひらをかざしてのフィニッシュ!
終盤は崩れてしまいましたけど、表現面では格段の進歩を見せていましたし、完成が待ち遠しくなってきました。これもきっと代表曲になりますぜ。
そうしてフラワーガールたちに囲まれて優しい笑顔を向ける羽生結弦。きっと数年後には羽生結弦に憧れた選手がロシアから続々と出てくることでしょう。
FSは167.89(78.25・90.64・減点1)、合計278.42。

試合後、「すぐに靱帯が切れたりするので。まあ、弱いというかもろいというか、それも羽生結弦です」と卑下した絶対王者ですが、その怪我を物語のアクセントにしてしまうのもまた羽生結弦です。
記憶に残る優勝をありがとう、大いに楽しませてもらいました。
怪我は心配ですけど、怪我との付き合い方が上手いのも羽生結弦ですし、いいシーズンになることを信じています!
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