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2018GPF・女子FS(後)、紀平梨花の基軸

(続きです。)
この18-19シーズンの女子フィギュアを盛り上げる存在といえばもちろん紀平梨花ですが、もうひとり挙げるならば間違いなくエリザベータ・トゥクタミシェワだと思います。
14-15の世界女王を獲った後はひどく低迷し、世界選手権にすら出られなくなった彼女が不死鳥のように復活し、トップレベルで活躍しているというのは嬉しい驚きです。
その理由について、テレビなどでは「3Aの復調」と説明されていますけど、本当の理由は”3Lzの復調”です。
トゥクタミといえば少女の頃から高さと美しさを兼ね備えたルッツジャンプこそが代名詞であり、それを基軸にプログラムを構成していましたし、3Aはプラスαなんです。
低迷時期はその3Lzが不調で、FSで2本ではなく1本に減らすこともありましたから、3Aにチャレンジする余裕がなかったというのが本音でしょう。
それが今季は好調で、NHK杯のFSでは久しぶりに3Lz+3Tを綺麗に成功させていました。
このGPFではジャンプの基礎点を若干上げてくるなど、自信を深めてきたトゥクタは、冒頭の3Aが乱れてターンが入るも、その後のジャンプはすべてクリーン。
もちろん3Lz+3Tも単独3Lzも鮮やかに決めていました。
それに加えて怪しげな踊りと妖艶な笑みで会場を沸かせ、『You Don't Love』とは真逆の人気も証明しているのですから、完全復活ですね。
FSは144.67(TES78.06・PCS66.61)、合計215.32。
この大会はSP・FS両方ともに3Aの着氷を乱していたにもかかわらず、ここまで得点を伸ばすのですから、それが成功したときは、ザギトワだってうかうかしていられないくらいのハイスコアになるはずです。
ロシア女王返り咲きもあるかも!?

3Aは女子にとっては超高難度ジャンプですから、それを跳ぶ選手が2人いるこの大会はまさに奇跡。
バンクーバーのお客さんは本当にラッキー。
しかも我らが紀平梨花は3A+3Tという唯一無二を跳ぶ!
…はずですでしたけど、冒頭の3Aは途中で開いてダウングレード気味の着氷。
いきなりのハードラック!
しかしこのときの紀平梨花の表情はどうだ。気落ちするでも同様するでもなく、ただただ強い眼差しで前を向く。
そして次のジャンプ、2A+3Tという安全な選択もあるなか、決断したのは3A+2T!これを確実に決めた!
気持ちが強いのはもちろんのこと、無理に+3Tにいかないところは冷静。
このバランス感覚が紀平梨花の凄味。
ただ、ザギトワが残した”226.53”を超えるためには、ここからはミスが許されない剣ヶ峰の綱渡り。
その重圧か、3Loの軸がやや狂うも空中で修正。
この運動能力は紀平梨花の強味。
高い足上げの鋭いスピン、指先まで丁寧に踊りながらのステップではエッジも正確で股関節が柔らかく、そこに長い腕の演技が重なって、完成度の高い演技。
抑揚や緩急などといった音楽表現は今後の伸びしろ。
中盤の3Lzには+3Tを付けなければならないところしたけど(前半に+2Tを使っているため)、余裕を感じるほどの着氷!
リカバリーをしっかり出来る頭の冴えと技術の冴えにシビれる!
タノ3Fもフォルムが明確で強さと美しさを兼ね備えている!
”基軸のジャンプ”でいえば、紀平さんは3Lzと3Fの二刀流であり、そこに絶対の自信を持っているからこそ3Aに落ち着いて挑めるのでしょうね。
その勢いのままのビールマンスピンも微塵の乱れもなく回り、まるでゾーンに入ったかのよう、タノ3Lz+2T+2Loも成功が約束されたように仕上げ、終盤でも脚力十分のシットスピンとコレオ、ちょんと跳ねてからの最後の3Sも完璧!
日本からやってきた『A Beautiful Storm』がバンクーバーを呑込んだ!これが紀平梨花だ!

緊張からか序盤は自分の身体を上手く制御できていないようなところも見えましたけど、それをすぐに修正し、途中からは完全に気持ちと身体を一致させ、正確な演技を完遂させたのは本当に鳥肌ものでした。
紀平梨花という選手の一番の武器はメンタルとフィジカルの分析とコントロールかもしれません。
日本女子にはこれまでなかったタイプであり、他競技も含めた世界的アスリートに近いタイプといっていいでしょうね。
紀平さんの活躍は日本フィギュアに新たなる可能性を示し、さらなる発展をもたらすと思います。

そして気になるFSのスコア、私はザギトワ(148.60)にちょっと届かないくらいかと思いましたけど、SPで”4.58”の差をつけていたので優勝は確信していました。
SP・FSを通して見れば文句なしの勝利です。
ザギトワ陣営も紀平さんの演技が終わった瞬間にシャッポを脱いでいたことでしょう。
そしてジャッジが出したのは150.61(78.21・72.40)、合計233.12!
よっしゃあ!初出場初優勝の快挙!
PCSが思ったよりも高く評価されていて戸惑いましたけど、今後の”期待点”というやつですかね。
これはロシア勢だってメドベージェワやザギトワがもらってきたものですし、大きな声で文句もいってこないでしょう。そもそも”基礎点と技術点”が違います。
まあ個人的にはPCSが70.00くらいだった方がしっくりきますけどね。今大会での勝利でもって次からザギトワに肉薄するという方が好みです。
(※ザギトワの今大会のFSのPCSは72.70。紀平さんのNHK杯FSは67.55)。

それにしても本当に見事な優勝でした。
3Aを跳ぶというだけではなく、その他のジャンプとスピン・ステップの基礎技術の高さ、そして表現面での体の使い方とスケーティングの練度という面でも隙がないのですから、絶対的な強さを感じます。
そして公の場でのメイクや表情、試合後のインタビューなどでの受け答えを見ると、”女王とはこうあるべき”という理想像を本人がしっかり持っているのもよくわかります。
また、それは家族や周囲の教育の賜物であり、共通意識なのでしょうけど、その一体感もまたこの16歳を支えている強さなのかもしれません。

2年前に彗星の如く現れた日本フィギュアの至宝は、ジュニアでの苦境があったものの順調に成長し、ついには世界女王に手が届くレベルまでやってきました。
GPF初出場初優勝は素晴らしい快挙ですけど、シーズンはここからが本番です。
日本選手権、四大陸選手権、そして世界選手権。
紀平梨花が真の女王として称えられるのはここからなんです。
もちろん、優勝インタビューに応じる紀平さん本人には微塵の油断もありません。
彼女が目指すのは世界の頂点、それも歴史に残るような女王なのでしょう。
紀平梨花の演技の本当の基軸は、その志の高さなのだと思います。

未来の偉大な女王に乾杯!
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