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稀勢の里は魅力的な力士だった

平成31年初場所、初日から3連敗を喫していた横綱・稀勢の里は、4日目の取り組みを待たず、”引退”を決断しました。
8連続休場という不名誉な記録のあとの1場所皆勤し、その次を休んでの3連敗ですから当然の判断といえるでしょう。
土俵の上での8連敗というのも横綱としてのワースト記録ですし、横綱での成績が36勝36敗の五分というのも前代未聞でしたしね。

普通ならばこういう横綱には大相撲関係者や相撲メディアから厳しい声が飛んできそうですけど、稀勢の里にはそういうものは皆無といってよかったかと思います。
19年ぶりの”日本人横綱”を掌中の珠のように愛でていたというわけです。
いや、稀勢の里は大関昇進の際も目安に1つ足りない32勝でしたし、横綱昇進の際も連続優勝もしていなければ、”綱取り場所”のプレッシャーを受けないまま勝ち星が積み重なってきたところで急に綱取りになったのですから、大相撲関係者と相撲メディアが一生懸命捻りだした横綱ということができるかもしれません。

そしてその”作られた横綱”というイメージを払しょくするために、横綱としての抜群の成績が求められた稀勢の里ですが、その最初の場所で左の上腕や大胸筋を痛める怪我をしながら執念の優勝を遂げたことが唯一無二の思い出となってしまいました。
その後は休場を繰り返し、ほとんど土俵に立っていませんし、たまに出てくれば観客からの同情がこもった声援を浴びながらもろくも敗れるというなんとも情けない姿を晒してきたわけです。

引退の引き金になったのは間違いなく”左腕の怪我”です。
「これがなければもっと優勝できた。稀勢の里時代になった」というひともいます。
しかし、本当にそうでしょうか?
稀勢の里が横綱に昇進したのは”30歳6ヶ月”ですから、力士としてはもう晩年にさしかかっていました。
過去の遅咲き横綱(30歳以上)を見ても、昇進後に力を落としてゆき、2年ほどで引退しているケースがほとんどです。稀勢の里の師匠・隆の里もそう。
あの大怪我がなくても、稀勢の里が”強い横綱”として評価されることは難しかったと思われます。 

また、これは少々厳しい意見ですが、稀勢の里の大怪我は起こるべくして起こったものという見方もできます。
あの怪我は横綱として最初の場所、日馬富士に寄り倒された際に負ったものですが、この日馬富士の寄りは強引にいったものでもなんでもなく、極めてよくある寄って行き方でした。
強引にいったのは土俵際ですくい投げを打とうとした稀勢の里の方です。
腰が伸びて負けが明らかなのにも関わらず、左から無理にすくおうとして、左の胸と上腕の筋肉を痛めたわけです。

普通の力士ならばそんな無茶な逆転は狙いませんが、若い頃からの稀勢の里の得意技のひとつといえば土俵際での叩き込みや突き落とし、すくい投げでした。
立ち合いの不味さと腰高という弱点を抱える稀勢の里は、相手が下位上位関係なく土俵際まで追い込まれることも多いわけですが、そこを大きな体と抜群の馬力で逆転してきたわけです。
しかし土俵際まで追い込まれるというのは負ける可能性も高くなるわけですから、あまりいいことではありません。

そんな弱点を補うために稀勢の里が選択したのはおそらく”体重増”だったのでしょう。
大関になる前は170キロ前後だったのが、そこからガンガン増やして170キロ後半の身体を作りました。
体重が増えれば、少々相手を受ける形になっても凌ぐことができます。
平成28年などはその大きな体のおかげで、安定した成績と年間最多勝に繋がったといってもいいでしょう。
そして初優勝を決めたのは翌平成29年初場所、そのときも3勝が土俵際の逆転劇でしたし、やはり体重は生きていました。

ただ、その体重増というのは力士にとって諸刃の剣でもあります。
角界では「160キロを超えると下半身を怪我しやすくなる」なんてこともよくいわれるように、巨漢力士はそれで引退に追い込まれることが多いわけです。
稀勢の里は29年3月場所で左腕付近に大怪我を負い、その後は休場を繰り返したわけですが、たまに出てきたときに目についたのは、左が使えなくなったことよりも”下半身の衰え”でした。
その理由は体重増と加齢に他なりません。
これは左腕の大怪我がなくても避けられない道だったことでしょう。

しかし稀勢の里はそのリスクを承知で体重を増やしたはずです。
力士人生を縮めてでも賜杯を抱きたい、横綱になりたい、そういう一徹な気持ちだったことでしょう。
そしてそれを叶えたからこそ引退会見で「土俵人生に一片の悔いなし」と語ったのだと思います。
執念と愚直さで夢を掴みとったところまでが稀勢の里です。
その後の彼らしくない往生際の悪さは、”日本人横綱”を求める相撲協会や相撲メディア、一部のファンの期待に応えるためだったと考えるのが妥当です。
その姿勢もまた愚直といっていいでしょう。

稀勢の里の魅力は、ポテンシャルの高さ、ガチンコ、そしてメンタルの弱さでした。
ファンはじれったさのなかに夢を見てきたわけです。
その夢から無理矢理に醒まし、稀勢の里を晒しものにした人間はなにに魅力を感じていたのでしょう?
ラオウの国籍なんて誰も知りません。
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