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骨髄バンクについて、小さな声で

日本では2009年5月に施行された裁判員制度ですが、この導入が議論されている際、よく聞かれたのが、「職場を休めるのか?」という問題でした。
結論からいってしまえば、労働基準法第7条(公民権行使の保障)によって休むことは可能になりました。
しかしそれが有給休暇になるか無給休暇になるかは、それぞれの”雇い主の判断”ということに落ち着いています。
選ばれた側からすれば有給が望ましいのはいうまでもありませんが、雇い主にそれを強制する法的根拠がないわけです。
法務省は「御理解と御協力をお願いします」とだけしています。

ただ、ここで重要なのは、第7条によって、裁判員に選ばれたひとはリスクを負わずに休めるということです。
当たり前ですけど、従業員がなんの理由もなく職場を休めば、雇用主はなんらかの懲戒処分を下すことができます。これは雇用主の権利といっていいでしょう。
裁判員制度による休暇は、雇用主が反対してもどうにもなりません。妨害すれば罰を受けるのは雇用主です。
裁判員制度は国が作ったものなので、そこはしっかりしています。

これに対し、このところにわかに注目が集まっている骨髄バンクのドナーはどうでしょう?

登録者がある患者さんに適合したとわかった場合、検査やコーディネーターとの話し合いが行われ、これにまず数日かかります。
そしてゴーサインが出たら今度は実際に髄液を抜く手術になりますが、これは3日~7日の入院を伴うことになりますから、トータルではかなりの日数の休暇が必要になることはいうまもでありません。
(術後は体調が悪くなるケースもありますから、もう少し要るかも。)

しかし、骨髄提供者がその休暇を職場に申請したとしても、職場がそれを許可するかどうかは職場の判断になります。
〈骨髄バンク〉は公益財団法人ですし、骨髄提供はあくまで”善意からの行為”ということになっているので、労働基準法にはなんの規定もないんです。
無給・有給の前に休めるかどうかもわかりません。
官公庁やごく一部の心ある企業は〈ドナー特別休暇制度〉を備えていますが、それはまだまだ一般的とはいえないですしね。

また、骨髄移植の際、患者側は手術に向け、腫瘍細胞の減少と免疫抑制のための移植前処置を行うのですが、これはかなり負担が大きいため、提供者は”決定した移植日”を厳守することが必要になり、同意書にもサインをします。
つまり、提供者は私生活でなにか重要な用事があったとしても、患者さんのために手術を優先することが求められるわけです。
冠婚葬祭に出られない、なにかの試験や入社面接などを受けられないという覚悟も必要です。

そしてもちろん提供者側の健康リスクも否定できません。
術後は腰部の痛みが数日続き、生活に支障を来すことがあったり、アザが数年の残るといったことが通常のケースになるのでしょうが、かなり低い確率ながら、死亡例もありますし、後遺症が残ったケースもあると、骨髄バンクも公表しています。
ちなみに、提供者側も手術前にはに”家族の同意”が必要なのですが、反対される場合が少なくないのは、こういったリスクのせいでしょう。

…と、ここまで私はまるで骨髄バンクに反対するようなことを書いてきたので、”ひとでなし”と非難されるかもしれません。
それでも今回こういうことを書いたのは、このところの骨髄バンクの盛り上がりのなかで、メディアにいる”声の大きなひとたち”がなんの気なしにドナー登録を呼びかけていることに大きな疑問を感じているからです。
”55歳以上”のテレビコメンテーターが、骨髄提供をさも簡単なことのように語っているのはかなり危険です。
ドナー登録する多くのひとびとの善意を否定するつもりは毛頭ありませんが、メディアからリスクを知らされずに登録してしまうことで、あとあとになって提供を拒否することになれば、嫌な気持ちしか残りません。
実際、いまでも色んな理由で提供に至らない割合が6割だというではありませんか。
その割合が増えるだけになるとしたら、あまりにも悲しいことです。

メディアが発信すべきは骨髄移植の実態であり、呼びかけるべきは提供者を保護するための制度です。
”善意”だけで出来ることはあまりにも少ないのです。
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