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令和の『白い巨塔』

テレビ朝日が開局60周年記念として『白い巨塔』をドラマ化すると発表したのは去年の秋でしたでしょうか、その主演が岡田准一くんということで、ネットでは不安視する声が大多数だったことを憶えています。
山崎豊子氏の小説『白い巨塔』は傑作との呼び声も高く、多くの読者を獲得しましたし、映像化も何度もされ、その度に一定の成功を収め、特に2003年~04年(秋・冬2クール)にフジテレビで制作された〈唐沢寿明版〉は平均視聴率23.9%、最高視聴率32.1%(最終回)という大ヒットを記録しました。
唐沢版はその後も再放送が何度かありましたし、その記憶がまだ色褪せないなかでのドラマ化というのは、なかなかのハードルの高さです。
しかも、岡田准一くんは原作や過去の作品で描かれた〈財前五郎〉のキャラクターとはかなりかけ離れていますから、多くにひとが心配になるのも当然でした。

そして元号が令和に改まったこの5月、22日~26日の5夜連続放送となったスペシャルドラマですが、視聴率は12.5%→11.8%→12.2%→13.5%→15.2%という寂しいものでした。
テレビ朝日を挙げて大々的に宣伝し、岡田くんを始めとした出演陣も番宣に出まくっていたのに、この数字というのは、テレビ朝日的にはかなりショックを受けたはずです。
とりわけ23日なんて、その前の『科捜研の女』が12.3%で、そこから0.5%が逃げ出しているんです。
日曜日の最終回でようやく15%を超えたのも、土日の昼間にそれまでのダイジェストを放送したおかげでしょうし、まったく喜べませんよね。

この失敗の原因を端的にいえば、主演に岡田准一くんを選んでしまったことでしょう。
岡田くんは一定の評価のある俳優さんですし、私も好ましく思っていますが、さすがに財前五郎は似合いません。
”芸能事務所主導””キャスト優先”という日本のテレビ業界の悪いところがそのまま出た作品といってもいいでしょう。
テレビ業界はいいかげんに考え直すべきです。こんなことをしていたら日本のテレビドラマはどんどん衰退してしまいます。

ちなみに原作物の映像化というのは、一度されてしまえば一定の期間を置くのが原則です。
『白い巨塔』のドラマ化もだいたい12年サイクルなので、著作権者側とそいう契約があるのでしょう。
ミスキャストで映像化されてしまえば、しばらく映像化はされない、もしくはずっとされなくなってしまうわけです。
原作ファンで映像化を望んでいるひとにとってはたまりませんよね。
『白い巨塔』にしても、もし5年後10年後に財前五郎にぴたりとはまる役者がいても、映像化はされないんです。

ただ、『白い巨塔』に関していえば、原作が1960年代の設定なので、それを現代に置き換えての映像化はもはやかなりの無理があるような気がしてなりません。
”医局制度への批判”と”患者側が不利になる医療訴訟”というのが『白い巨塔』の大きなテーマですけど、それおいまではかなり様相が変わっています。

大学医学部の教授を頂点とした医局制度は、人材の育成と職場の振り分けによって医師の一生の面倒を見る仕組みですが、人事を握ることで教授が絶大な権力を持ってしまうため、それが医局内の激しい権力闘争に繋がり、”患者と向き合う”という医療の本質を見失わせてしまう、というのが『白い巨塔』の大筋といっていいでしょう。
現実でも医局制度は、隠蔽体質、製薬会社との癒着、個々の自由が抑制された研究環境という部分で批判が集まっていました。
そのせいもあってか、2004年に医局を弱体化させる制度が国によって導入されます。
新医師臨床研修制度です。
これによって若手医師が出身大学以外で研修することが増え、医局に入る割合も減り、医局の権威も弱まったといわれています。

しかし、このことで逆に問題になってきたのが”地方の医師不足”です。
医局が担っていた”地域病院の医師派遣”が難しくなっきたがの原因のひとつと考えられています。
大学病院内の若手医師の数が足りなくなり、その分を地方から引き上げるということもあるそうです。

また、医療訴訟についていえば、90年代に数が急増し、メディアでも医療過誤が大きく取り上げられるようになりました。
いまでは患者側の防衛意識も高まり、医師にプレッシャーを与えることも少なくありません。
”医療にミスはつきもの”ですから、裁判でも医師側の過失が認められにくく、患者側が勝訴する確率はまだまだ低いものの、医師には胃の痛い状況といっていいでしょう。
そういう状況のなか、責任者になりやすい勤務医が避けられるようになったり、敗訴率が高く、賠償金も高額になりがちな産科医が減ったというデータもあります。

このように、現在の日本では〈医療崩壊〉が叫ばれているわけですから、『白い巨塔』はもはや時代に即していないといっていいでしょう。
ドラマ化するにしても、もっと内容を変えねばなりません。
その上で財前五郎のキャラクターも変えてしまえば、岡田くんだって文句をいわれなかったはずなんです。
つまりはテレビ朝日が悪いんです!

…そんなふうにテレ朝とジャニーズ事務所の喧嘩が始まって、テレビドラマ崩壊が起きれば、もう少しまともな業界になるんじゃないでしょうか。
そういえばテレビ局の社屋って、たいていが”白い巨塔”ですよね。
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