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御嶽山の鍵

あの忌まわしい2014年9月の御嶽山の噴火は、63人もの犠牲者と、数えきれないほどの負傷者を出したわけですが、その原因の多くは”噴石”でした。
水蒸気爆発によって弾き出された大小様々な噴石の速さはマッハに達していたといいますし、雨あられのように降り注いだというのですから、ロケット弾が飛び交う戦場以上の恐怖です。
身を隠すところの少ない登山道で、それに被弾するかしないか、身体のどこに当たるかは、まったくの運・不運だったようです。
また、運よく山小屋に逃れたはずが、噴石がその屋根を易々と突き破ったケースもあるのですから、残酷すぎます。

これを受けて、噴火災害後の御嶽山には噴石避けの避難シェルターが複数設置されましたし、避難所になる山小屋の屋根も鋼鉄の上にスーパー繊維で補強がされました。
かりにまた何かあったとしても、多くの人命が救われることでしょう。
この一連の安全対策は国が法律とマニュアルを策定し、各都道府県が制度を作り、補助金を出す仕組みになっていて、長野県でもそれに沿って工事をする形でした。
長野県と御嶽山を共有する岐阜県も、登山者の多い活火山である富士山を抱える山梨県でも同じようなことをしました。

そんななか、この避難所について、御嶽山被害者や被害者遺族から、さる要望が出されたんです。
全国ニュースにはなっていないかもしれませんが、9月18日(2019年)の長野県内ではかなりの時間を割いて伝えられています。
その内容は「避難所になっている祈祷所の鍵を登山シーズンに渡って開けて欲しい」というものでした。
祈祷所は御嶽神社の所有で、木曽町側にあるため、町の補助も入って避難所としての性能を整備されたものですが、御嶽神社はお参り期間の7月1日~9月3日までしか開放していないんです。
噴火が起こったのが”9月27日”ということもあるのか、遺族たちからすると「もっと長く鍵を開けておくべきだ」というわけです。
人情としてはとてもよくわかる話です。

ただ、御嶽神社側からすると、あくまでそこは祈祷所であり、財産や設備も置かれているため、防犯や管理のためにも施錠しておきたいとのことでした。鍵を開けたり閉めたりするためには延長期間中にも人員を配置せねばならず、それが難しいようです。遺族らから要望を受けた神社の神主さんはとても困惑したような顔をしていました。
同じく要望を受けた木曽町の方も似たようなものです。
祈祷所を管理するとなれば人員は複数必要になるでしょうし、山頂(標高3067m)にあるため日帰りというわけにもゆきませんから、そこに住み込むか、別の山小屋に泊って通うか、いずれにしろしっかりと人件費を含めた予算を確保せねばなりません。
しかも、こういう仕事は引き受けてくれるひとも少ないですから、夏休みシーズンでもなく、10月半ばまでともなると、かなり厳しいものがあるはずです。

私ももちろん遺族のみなさんの気持ちも理解できるつもりです。
しかし、御嶽神社や木曽町の事情も勘案すれば、開錠の要望は少々強引に思われます。
そもそも、神社にも町にも安全管理義務はないんです。
厳しいいい方をすれば、登山は自己責任です。
シェルターや山小屋の補強に税金を投入することに反対のひともいるかもしれません。
あれだけ大きな災害があったので、大きな声ではいえないでしょうけど…。

”山と補助金”でいえば、以前、”トイレ”についての激しい議論が交わされたこともありました。
国や県がその建設や改修に補助金を出していたことに対し、「受益者負担・汚染者負担の原則からおかしのではないか」という声が挙がったんです。
民主党政権の事業仕分けで補助金が一時廃止されたものの、喧々諤々の末、いままた復活しましたが、受益者負担・汚染者負担の原則というのは正論ですし、反対の声があるというのは理解しておくべきでしょう。

そこで私が思うのですけど、御嶽遺族のみなさんなり、登山愛好者のみなさんだったりで〈登山基金〉のようなものを作って、登山者や登山用品メーカーからの寄付を募り、そこから今回の御嶽神社や木曽町のようなところに援助金を支出し、避難所がより細かに運用できるよう促したらどうなんでしょう?(トイレの整備も含めて。)
そういう形での要望ならば受け取る側もありがたいでしょうし、現実的にも動きやすくなるはずです。

登山で一番大事なのは”助け合い”だといいますが、山の下でもその精神を持ち続けられるといいですよね。
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