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2019GPF女子シングル(後)、泣き言はいらない

(続きです。)
そうしてロシア3人娘が表彰台を独占し、新時代の到来が印象に残った2019GPFですが、彼女たちの華やかな笑顔と対照的な表情を見せていたのは、五輪女王であり、現世界女王であるアリーナ・ザギトワでした。
SPでは79.60(PCS36.46)の2位と気を吐いた彼女ですが、FSでは冒頭の3Lz+3Loを完全に回転が足りない形で転倒してしまうと、その後のジャンプも勢いのないものが続き、回転不足を取られなかったのが2本だけという大崩れとなり、スコアは126.63(68.79)で6選手中6位。
トータルでもまさかの最下位に沈みました。
演技内容といい、ザギトワの打ちひしがれた表情といい、観客もフィギュアファンも、ショックを受けなかったひとはいないと思います。

今季のザギトワは、2戦あったGPSでも妹弟子のコストルナヤの後塵を拝する形で2位と3位、ベストスコアも217.99という苦戦が続いていました。
推測される要因としてはまず体型変化が挙げられるでしょう。
昨季も身長が伸びて苦労していましたが、今季はさらに大人の女性らしい肉体になってしまったがために、それを扱い切れていないように見えます。
またそこに追い打ちをかけるように同門のロシア3人娘が3Aやクワドをばんばん跳んできて、基礎点が大きく引き離されるので、精神的なプレッシャーも計り知れないものがあります。

”完成度”や”芸術性”といったって、やはり限界はあります。
ザギトワのPBは昨季の世界選手権で出した237.50ですが、パーフェクトで揃えた結果がそこです。
それに対して3人娘たちはノーミスだと240点を優に超え、1回くらい転んだってザギトワには負けません。
こうなればザギトワも4回転か3Aを導入すべきなのでしょうけど、身体が大きくなって3回転にも四苦八苦している現状から考えれば、それは無理難題というものです。

そんなザギトワを見て、ロシア国内では「引退してはどうか」という声も聞かれているようです。
功成り名遂げた選手なのだから、傷ついてまで現役にしがみつくことはないということなのでしょう。
これはこれで同情の籠った優しい声だと思います。
しかし、私はザギトワは戦いの舞台から下りることはないと確信しています。
そもそも、3人娘はザギトワの同門であり、五輪シーズンにはすでに現在の萌芽を見せていて、ザギトワだってすぐに自分が追い抜かれることは理解していたはずなんです。
それでも彼女は五輪女王となったあとでも、現役を続行したわけです。
昨季のインタビューで彼女は、「ただ滑ることに幸せを感じています。自分のため、そして応援してくれるファンのために滑りたいです。フィギュアスケートを愛しているんです」と、素直な心情を吐露しています。
そんな選手からフィギュアスケートを奪うことは誰にもできません。

ザギトワは現在17歳(02年5月生まれ)。表現者としてはまだまだ成長期です。
演技もロシア流(エテリ門下流)のバタバタしたアリバイ繋ぎの連続から徐々に脱却し、点取りではない真の芸術性に近づき始めているところです。
もう2、3年したらザギトワのスタイルが確立することでしょう。
多くのフィギュアファンがその過程を楽しんでいるはです。
もちろん、勝負を捨てていいはずはありませんが、まずは自分の演技です。
日本語には「相撲に勝って勝負に負ける」という言葉がありますが、演技を磨いて行けば、ファンという名の行司は軍配を上げてくれるんです。

好角家ならぬ好氷家から愛されているといえば、涙の五輪を終え、ロシアを飛び出したエフゲニア・メドベージェワは、そういう形でフィギュアを楽しんでいるように見えます。
ハイスコアは出なくなりましたが、いまのメドベージェワは本当に素晴らしい滑りをしていると思います。
女子シングルの芸術性をひとりで背負っているようにも見えるくらいです。
”続けることに意味がある”を実証している選手といっていいでしょう。
技術的にも新しいジャンプ(3S+3Lo)を取り入れ、決して勝負を諦めていないところも、メドベージェワはカッコいいですよね。

これは私見ですが、女子シングルは芸術性(PCS)の評価について、一度よく考えるべきだと思います。
現行ルールでは女子のPCSは40点満点(FSは×2)ですが、ザギトワやメドベージェワは37点を超え、天井近くまでいってしまっていて、伸びしろがほとんどありません。
若手たちはどんどんそこに迫っているのに、いくら演技を磨いても、点差がつかないわけです。
いまの女子シングルは技術点が信じられないくらい伸びているのですから、男子同様に50点満点にすべきだと私は思います。
そうすれば”完成度と芸術性”の選手も、少しは戦えるようになるはずです。
ステップやコレオの基礎点を上げるという手もあるでしょう。
スポーツであるフィギュアはジャンプが基本ですけど、選手が色んな持ち味で戦った方がよりエキサイティングになります。
フィギュアは芸術バトルでもあるのですからね。

その色んな持ち味でいえば、我らが紀平梨花は3Aに加え、”弱点がない”という類まれな才能を持ってはいるものの、いまは3人娘のビッグジャンプに叩きのめされてしまっています(GPFは大差の4位)。
これはひとえに4Sの導入が遅れているせいです。
競争激しいロシア国内、しかも同門で切磋琢磨する3人娘は、ライバルに後れを取るまいと、毎日とてつもないプレッシャーで背中を突かれているような状況のはずですし、それが技術習得を速めているに違いありません。
これは日本にはない環境です。
ですから、紀平梨花の遅れは、日本女子の遅れと捉えるべきなのです。
かつて栄華を誇った日本女子は、いまや完全に斜陽に入っています。
日本のフィギュア関係者は、その自覚を強く持ち、毎日をとてつもないプレッシャーのなかで過ごさねばなりません。
泣き言はいらないのです。
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