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純豚骨ラーメンの話

日本でも日に日に感染者が増え、感染地域が広がる武漢肺炎ですが、そうなると国民もなんとなく外出を控えたり、不特定多数のひとが行く場所を避けたりするのはもっともなことで、外食産業などは特に深刻なダメージを受けていると報じられています。
私の住む長野市ではまだ感染者は出ていませんけど、それでもやはり影響があるのか、先日行きつけのラーメン屋さんに入ると、いつもよりお客さんが少ないように感じました。
私はもちろん予防には気をつけていますけど、気にし過ぎても仕方ないので、イベントなどは避けながら、普段のことはあまり変えないようにしています。

ところで、長野県といえばなんといっても”信州味噌”ですから、ラーメン屋さんでも味噌専門店があったり、味噌ラーメンに力を入れているところが少なくありません。
全体的な特徴でいえば、スープは豚骨ベースでこってり、ちょっとニンニクを利かせて、麺は太目ということになるでしょうか。
美味しい店が多いので、私も寒い日はこの信州風の味噌ラーメンが恋しくなります。
しかし、よく考えてみると、この2019-20年は歴史的暖冬のせいか、味噌ラーメンをほとんど食べていません!
先日もあんまり寒くなかったので、味噌専門店は候補から外れていました…。

それでまあ色々種類のあるお店で、私は豚骨ラーメンを食べたのですが、最近のお店では”こってり”と”あっさり”を選ぶようになっていますよね。
ちなみに私はほとんどの場合”こってり”を選びます。それが特に好きというわけではないのですが、”あっさり”はただ単に”味が薄い”ことが多いからです。
同じ値段(こってりが少し高い店も)を払うのだったら、濃い方がいいですものね。

ただ、その濃さというのも、ほとんどの場合は、脂やコラーゲンの多さです。
具体的にいえば、スープの鍋に豚足や豚頭や背脂が余計に加えられて、こってりになっているわけです。
ですから、本当の意味で骨の旨味は増していません。
それがわかっていながら、こってりを頼む自分の卑しさが恥ずかしいですけどね…。

そんな豚骨ラーメンでいうと、私がよく思い出すのは、京都市の白川通りにあった〈一休軒〉というお店です。
いまから20年くらい前にあったお店ですけど、風の噂で”純豚骨ラーメン”とやらを出すというのを聞き、相方と一緒に訪れてみると、店主がひとりで切り盛りしているえらく質素なお店で、メニューもラーメンしかなかったように記憶しています。
また、運ばれてきたラーメンもえらくシンプルで、具もチャーシューとネギとキクラゲくらいだったでしょうか、紅ショウガが入っていなければ、テーブルの上にもなかったはずです。
麺は豚骨ラーメンでよく見るストレートタイプで珍しくありませんでしたけど、やや白濁したスープはそれまで味わったことがないくらい”あっさり”したものでした。けれども決して”薄くはない”んです。
これはかなり衝撃的でした。

その味を2人で話し合っていると、お店に他のお客さんがいなかったこともあるでしょう、ちょっと顔色の悪い店主がカウンターの向こうから出てきて、自分のラーメンを語り始めたんです。
佐賀県で修業したという店主がまず最初に強調したのは、「うちはゲンコツしか使っていない。それも肉と脂を極限までこそぎ落とした骨を使っている。それを沸騰させずにスープにしている」ということでした。
店主にいわせれば「それが本当の豚骨ラーメンだ」と。だから「純豚骨」と銘打っていたわけです。
それにプライドを持っているせいか、脂で白濁した豚骨ラーメンをややディスっているような感じすらしました。

その一休軒さんのラーメンももちろんやや白濁していましたけど、それは脂や余計なコラーゲンで乳化したわけではなく、「(割った)骨の髄が溶けたから」であって、脂に味はないというのがポリシーだったのでしょう。
また、醤油の味が強すぎると豚骨の味がわからなくなるといって、「白醤油を選んでいる」ともいっていたはずです。
店主は熱っぽく語り、私と相方はただただ頷くのみでした。
ラーメン屋さんからのこういう話は貴重でしたし、そのひとの内面の滾りを聞くのもまた貴重でした。

しかし、その間もお客さんは来店せず、我々には店主の声は、自分のラーメンが”こってり文化の京都”になかなか受け入れられない嘆きとも思えたものです。
また、当時だって豚骨といえば”こってり”というイメージでしたし、他のラーメンも全般的にこってり傾向でしたから、あっさりながら味わい深い豚骨というのは、完全に流れから外れたものでした。
そういうなか、一休軒の店主は”本物”を届けたかったのでしょうけど、京都人は「本物でなくてもいい」というすげない態度を取ったのかもしれません。
ときが来て勘定をした我々は、閑散としたお店に店主をひとりを残すことに、少しだけ後ろ髪を引かれたものです。

しばらくすると、一休軒さんは店を閉じました。
理由はわかりませんが、あのときの店主の顔色からすると、体調を崩していたのかもしれません。
私と相方はいまでもあの味を懐かしく思い出しますし、佐賀県にあるという純豚骨ラーメンをいつの日か食べたいと思っています。
あっさりもこってりも選ばないラーメンを。
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