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コロナ禍も土俵禍も

3度目の緊急事態宣言が出され、色んなイベントが無観客を選択するなか、令和3年5月場所もそれに足並みを揃えることが発表されました。
3月場所も緊急事態宣言下だったものの、そのときは5千人までという基準で観客を入れていたので、相撲協会は変異型が流行っているいまの状況に強く警戒しているのでしょう。

そんな5月場所の番付が発表された4月26日、料理人の神田川俊郎さんが武漢肺炎を患った末に死去されたというニュースが飛び込んできました。81歳だったそうです。
神田川さんといえば、ここ何年も3月の大阪場所の向正面に座り(場所自体には40年間通っていたそうです)、テレビ中継ではお馴染みでした。
経営するお店で力士にご馳走することも多かったといいますから、昔ながらの相撲好きのタニマチだったのでしょう。目立つ格好をするわけでもなく、ごく自然に取り組みを楽しんでらした姿が印象に残っています。
(※タニマチの語源は大阪谷町に住んでいた好角家のお医者さん。)

そんな神田川さんですから、大阪場所が2年連続で開催されなくなったことに心底がっかりされていたと思います。
大阪場所は他の地方場所と違って大坂相撲の伝統に根ざしていますから、東京相撲と張り合ってきた大阪の好角家のみなさんが同じなのではないでしょうか。
神田川さんといえば「花に水、人に愛、料理は心」が決まり文句ですけど、そこに付け加えるならば「春の浪速に大相撲」です。
来年こそ大阪で開催され、そこで優勝した力士にぜひこのセリフをいってもらいたいものです。

…と、昨日までの私はそんなことを考えていたのですが、今日4月29日、3月場所で負傷し、入院していた3段目の響龍が、それが遠因となって亡くなったというニュースを聞いて、いまはただただショックを受けています。
この”土俵禍”といっていい悲劇は大相撲の長い歴史のなかでも初めてかもしれませんし、想像もしたくない出来事です。
格闘技の死亡事故でいうとボクシングのリング禍が真っ先に挙がるものの、あれは打撃系なので危険度が高く、相撲のような組み技系ではあまりありませんから、響龍の訃報が本当に信じられません。まだ28歳ですぜ。

もっとも、この響龍の場合、取組後に適切な処置をしていれば結果が違ったのではないかという医療関係者の意見がネットでは散見されます。
投げを食らって頭から土俵に落ちた響龍がうつぶせになったまま起き上がれずにいるのを親方衆らスタッフたちは数分放置し、それでも動けないとわかると慌てて土俵に上がったものの、脳震盪や頸椎損傷の可能性を考慮することなく響龍の身体をいい加減に扱い、首や頭を固定することなくタンカに乗せて運んで行ったことを厳しく批判する内容です。
私はこれに全面的に同意します。
そもそも大相撲は事故を想定したメディカルスタッフを配置しておらず、それが本当におかしいんです。

報道された響龍の死因は「急性呼吸不全」になっていますけど、これは頚髄損傷による呼吸筋麻痺が引き起こしたものではないでしょうか?
損傷は投げで受けたものかもしれませんし、その直後の初期対応の不備による2次損傷の可能性も捨て切れないと思います。
八角理事長は「突然の訃報にただただ驚き、茫然としています。ご家族や師匠らの懸命の看病のもと、力士らしく、粘り強く耐え、病魔と闘ってくれました」というコメントを出していましたけど、”土俵禍”であることを無視した態度には聞いているこっちが驚き、茫然としてしまします。

相撲協会は3月の響龍の事故を受けても土俵禍への備えについてなにも対策を発表していませんし、力士の健康や命を軽んじているとしか思えません。
基礎疾患がある力士が武漢肺炎への恐怖から本場所を休場したいと希望したのに、協会はそれを却下し、引退に追い込んだことがありましたけど、根本的な思想はそれと同じです。
それを正さない限り、大相撲の近代化はありません。
伝統の八百長を捨ててガチンコを選んだのですから、力士を競技者として扱うべきです。
力士は古代ローマの剣闘士じゃないんです。
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