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2012アルガルベカップ準優勝とキャプテン宮間

わずか8日の間に4試合をこなすという過酷なアルガルベカップ2012もいよいよ決勝戦。
予選グループで前回優勝のアメリカを下し、初優勝に王手をかけた我らがなでしこジャパンの対戦相手は世界ランキングでアメリカに次ぐ2位のドイツ。W杯ではなでしこがドラマティックな勝利を収め、そのおかげでドイツは五輪への出場の道が絶たれましたから(W杯で欧州2位以内が条件だったものの3位に)、向こうからしたらまさにリベンジマッチです。

なでしこのスタメンはGK海堀あゆみ、4バックは右から有吉佐織、岩清水梓、宇津木瑠美、鮫島彩、ボランチは阪口夢穂とキャプテン宮間あや、右SH大野忍、左SH川澄奈穂美、2トップは永里優季と安藤梢。
優勝がかかった試合でしたが、どうやら佐々木則夫監督はテストを優先させた模様。
調子のよくなさそうな海堀の起用、それに不動の右SB近賀ゆかりを使わず、有吉を左右のSBのバックアップとして確立させようという判断、大黒柱の澤穂希(体調不良が気がかりです)にもしものことがあったときのためのボランチはこの大会では田中明日菜をチョイスしていましたが、田中がここまであまりフィットしていないのでこのドイツ戦では宮間を試すといったところでしょうか。
また、宮間をボランチにすることで川澄と大野の同時起用という形も副産物として生まれるのでそちらも興味深いものがあります。

会場はポルトガルのファーロ、3月7日午後1時10分(日本時間午後11時10分)、熱戦のキックオフ!
立ち上がりはドイツが素晴らしい集中力で組織的なディフェンス。体格やフィジカル能力で遙かに上の相手に勤勉に守られるとさすがに苦しく、なでしこは全体が引き気味になって、ドイツペース。攻めてもなかなかボールを回すことができません。
それでもこの大会でさらに磨きがかけられたチームとしての守備がありましたから、なでしこたちはドイツの分厚い攻めを落ち着いて撥ね返します。守備面の成長はこの大会の一番の収穫かも。
しかし、守備というのは組織だけがよくてもダメなんですよね。
前半20分、ドイツに右サイドをえぐられてセンタリング。そのボールを宇津木がマロジャンに競り負け、海堀もニアのシュートに対応しきれず失点。
そのすぐ後、22分にはドイツの左CK、岩清水がオコイノダムバビに体を寄せられず、強烈ヘッドで2失点目。
両失点ともそうなのですが、なでしこはどうしても個では劣りがちなので、1対1の局面で集中力が欠けたり、気持ちで負けたりすると案外、簡単にやられてしまいます。

それにしても前半のなでしこはバランスが悪く、ボールがなかなか前に進まず、テレビを観ていてじりじりとしてしまいました。
守備に意識が行き過ぎていたせいか、宮間と阪口が最終ライン近くでプレイしすぎていたのと、両SHの川澄と大野が攻めの基点となるようなプレイがなかなかできなかったためといったところでしょうか(2人は使われた方が生きる感じ)。

それでもなでしこの素晴らしいところは永里や安藤が中盤に下がって、ボールを引き出す動きをし始めたところ。
そして35分、安藤が中盤でボールを運び、ドイツDFを引きつけると左の川澄に絶妙なスルーパス!
それを受けた川澄はPAでひとつ切り返して、ファに巻く見事なシュート!川澄のこの落ち着きはいつもながら頼もしい!
このゴールもそうですし、ドイツの動きがやや落ちてきたので日本ペースのまま前半終了。出来れば前半のうちに追いつきたいところでしたけど、欲張らない欲張らない。

後半冒頭、安藤→田中明日菜(田中はボランチ、宮間が左SH、川澄がFW)、鮫島→近賀(近賀は右SB、有吉が左SB)、岩清水→熊谷紗希という3枚代え。
この交代は完全に吉。宮間が高い位置に入るとやっぱり攻撃が活性化されます。左右のサイドの裏をえぐるなでしこの攻撃に大柄なドイツDFはたじたじ。
そして後半10分、ショートコーナーから川澄が相手PAでするすると仕掛け、マイナスのクロス、それに永里が合わせますが、コントロールし損なってゴールマウスを逸れそうになったところを田中がスライディングシュート!日本同点!

そこからは日本の流れのようでしたけど、ドイツはなでしこが苦手なハイボールを駆使して単発ながらもチャンスメイク。GK海堀はコンディションが悪いのか動きに精彩がなく、ひやっとする場面も。
それでもドイツに渡って安定感を増した熊谷と前半から気合を入れなおした宇津木がいい具合にフォロー。

しかし後半30分くらいからドイツは疲労からかずいぶん動きが落ちてきて、なでしこへ勝利の匂いが漂ってきます。
あのドイツ相手に互角に戦い、普通に勝ちそうな雰囲気になっているという事実にテレビの前の私は戦慄。本当に強くなりました。もう間違いなく世界のトップ4にいます。

ところがゲームというのは何が起きるかわかりません。
後半42分、ドイツの右サイドからの攻め、上手くパスをつながれ(股抜きを許しました田中にはもうちょっと頑張って欲しかった)、抜け出したシュミットの肩を有吉が思わず引っ張ってPK!
これをオコイノダムバビにびしっと決められ、たぶん日本中がガックリ(視聴率は21.7%もあったそうです)。

ただ、ここで諦めないのが我らがなでしこの逞しさ!
佐々木監督も田中→高瀬愛実というカードで攻めのメッセージ(田中は攻めでは判断が遅く、守りでは力強さと集中力に欠けるという出来。交代にも懲罰的な空気を感じました。ただ、田中の実力はこんなものじゃありません。これを糧にさらなる刻苦勉励を積みレベルアップしてくれるはずです)。

残り時間2分少々(ロスタイムも2分)、なでしこは前だけを向いた果敢な攻め、その迫力にあわてたのか、45分、高瀬の放り込みをGKシュルトがまさかのファンブル!永里がそれを執念でゴールにねじ込んで日本奇跡の同点!

規定では延長戦はなく、すぐにPK戦ということで、私などは「海堀の調子が悪そうだから、なでしこが不利かなあ」なんて思っていたら、46分、ドイツが左サイドから長い放り込み、これが最終ラインとGK海堀の間の絶妙な位置に!
そこにこの試合2得点で乗っているオコイノダムバビが突進!
日本DFはすがり付けず、海堀がシュートコースをふさぐために前に出て五体を広げたものの、オコイノダムバビはいったんボールを浮かして海堀を避け、獣のような身のこなしから誰よりも速くそのボールに追いつき、豪快なシュートで、まさかの勝ち越し!しかもハットトリック!

これでさすがに勝負は着きました。
3-4というスコアが物語る激闘で、なでしこは準優勝。ドイツは五輪に出られない悔しさを晴らす見事な優勝。両チーム天晴れ!

清々しい好ゲームでしたから、試合後は勝ったドイツだけではなく、負けた日本も笑顔で、互いの健闘を称え合っていたのが印象的。スポーツって素晴らしいです。
しかし、そんななかひとり、目を真っ赤にして悔しがる選手が。
それはなでしこの新キャプテン、宮間あや。
「最後まであきらめずに戦ったけど、優勝できずに残念です。内容的には前回の試合よりもよくなかった。新しく組んだメンバーとも声を掛け合って精いっぱいやったので、そこは誇りを持ちたいです。結果を残せなかったことには責任を感じます。ここまで来て優勝できなかったことは自分たちの力不足だと思います。日本でまたキリンカップも開催されるので、ぜひ応援してくれたらと思います。」

この試合のなでしこはテストと勝負という2つの課題を素晴らしいバランスで消化したと思うんです。
負けたとはいえ、褒められたっていいくないの内容です。それなのに宮間のこの姿勢…、なんてオトコ前なんだ!
”キャプテン宮間”、最高です。
プレイでも宮間は攻守両面でさらに気持ちが前に出る場面が見られましたし、佐々木監督、澤さん、宮間本人の三者会談でキャプテン禅譲が決まったそうですが、大正解だったんじゃないでしょうか。

宮間は大会のMVPにも選ばれたんですけど、そのコメントがまたクールなんです。
「盛り返せたのは、後半に相手の足が止まったから。粘り強さを見せたんじゃなくて、最初からやれば良かったというだけの話です。今日の試合は、1人ひとりの立ち位置が問題だった。4失点なんて、わたしたちのチームではあってはならないこと。こんな出来では、五輪のグループリーグ突破だってできないかもしれない。振り出しに戻ったとまでは言わないですけど、自分たちの足元を見つめ直すいい機会になったと思います。攻撃の面では、流れの中から2得点できたことは収穫。
2点目の、長いサイドチェンジから点を取れたのは良かった。点を取るバリエーションが増えていると思います。大会MVPをいただき、ありがたいけれど、個人の賞にはあまり興味がないです。」

今大会の最大の収穫はキャプテン宮間かも!
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